2007/02/03

ブラディ・サンデー <2002/イギリス・アイルランド>

ブラディ・サンデー <2002/イギリス・アイルランド>

★★★★★★★★☆☆ (8points)

怖い映画です。何が怖いって、市民を無差別に撃ちまくるパラシュート部隊の人間たちの、その小市民ぶりが、怖いです。そして、さらに、観てる自分も、状況次第で、彼ら同様の行動をとるかもしれない、その可能性が、怖いです。

鑑賞前の事前情報は、U2の「SUNDAY BLOODY SUNDAY」と、そこから連想される「デモ隊と警官の衝突でとんでもないことが起きたんだろうなぁ」というごくごく素朴な想像、それと、ベルリン映画祭金熊賞受賞ということ、のみ。

実はあんまり期待しないで観たのですが、正直、驚いた。

市民側と軍隊側で暗転する画面、手持ちカメラの臨場感、エンドロールの真っ暗な画面に流れる「SUNDAY BLOODY SUNDAY」などなど、痺れた箇所を挙げたらきりがないくらい。

でもね、そういう瑣末なことよりね、この映画、何がすごいって、ちゃんと物事の不条理を描けてるところ。そして、不条理を何かに回収しちゃうのではなくて、不条理を不条理としてそのまま描いているところ。

軍隊側に絶対的な悪人を置かず、あくまで、臆病で保身的で、それゆえに暴発しやすい小市民の狂気を描く。鍛えられたパラシュート部隊とはいえ、ひとりの人間である、という前提をけして踏み外さない。そして、人間であるがゆえに、時に、無意味な狂気へ至る。まさに、アイヒマンですな。例えば、この映画に、イギリス政府の陰謀なんて要素が入ってきちゃったら、もう台無しだが、そういう安易に流れないところに、感動した。

これぞ映画です。