2007/05/15

明日、君がいない <2007/オーストラリア>

明日、君がいない <2007/オーストラリア>

★★★★★★★★☆☆ (8points)

スゴイ映画を観ました。去年のカンヌでは上映後20分間のスタンディング・オベーションが起こったらしいけど、これ観た後、すぐ立ち上がれる人は、そもそもこの映画がちゃんと理解できてない人なんじゃないだろうか?

現在公開中のこの映画。観に行きました。

物語はこんな感じ。

映画の冒頭で、あるオーストラリアの平凡な高校で、午後2時37分に、誰かが自殺したことだけ、知らされる。で、その後は、その高校に通う男女の生活がその日の朝から時間軸にそって淡々と描かれる。両親からの過度の期待に押し潰されそうになる優等生のマーカスやら、その妹で両親のいない時の兄の変貌振りに怯えるメロディーやら、マッチョをきどりつつも実はゲイのルークやら、ゲイ&ジャンキーのショーンやら、いじめられっこ&転校生のスティーヴンやら。1人1人それぞれ色んな悩みを持っていて、もう誰が死んでもおかしくない。その意味じゃ、ある意味、これ、犯人探しのサスペンスとおんなじ構成。他殺が自殺に変わっただけ。

でね、前半、というか、最後10分を除き、全部、超退屈。だって、彼ら/彼女らの悩みってやつが、それぞれにとってはそれはそれは大変な問題なんだろうけど、こう言っちゃなんだけど、全部、普通。「そういうの、昔、さんざん観たよ、野島伸司のドラマで」って感じで、既視感にあふれる。「あぁ、下らねぇ映画観ちゃったな」ってその時点でちょいと後悔。

でもね。最後の最後で…、はい、まんまと騙されました。おじさん、たまらず、「えぇッ」って声出ましたよ、映画館なのに…。

で、もうその後は、エンドロール終わっても、立てない…。ほんの10分前までは、「野島伸司かよ…ッ」と上田晋也ばりの華麗なるツッコミをちっちゃくつぶやきつつ、エンドロール始まったらすぐに颯爽と出て行ってやろうと思っていたのに…、そもそも立てない…。

思い切りネタばれになるので、ここから先は書きませんが、とにかくこれは観といた方がいいです。

 ※ちなみに、まだ渋谷のアミューズでやってる、はず。

プラダを着た悪魔 <2006/米>

プラダを着た悪魔 <2006/米>

★★★★★☆☆☆☆☆ (5points)

可もなく不可もなし。毒にもならず薬にもならない。暇つぶしにはもってこい、ですな。

ファッション誌のカリスマ鬼編集長(メリル・ストリープ)のアシスタントにふとしたきっかけでなってしまったジャーナリスト志望の女の子(アン・ハサウェイ)が、怒られ、いびられ、いじめられながらも、アシスタントとしての仕事をおぼえ、まるで興味のなかったファッションにも徐々に目覚めていく…、である地点までできるようになると、ふと我に返って、「あれ、一体わたしは何がしたいの」と自分探しを始める…。

まぁ、なんて、ありがちな物語なんでしょ(書いててこっちが恥ずかしくなるくらい)。

でも、一応、最後まで観ちゃいました。だって、観てて疲れないから。

テンポもいい。ストーリーもこっちの予想をまるで裏切らないので頭使う必要がない。アン・ハサウェイはかわいい。

要は、ぼけっと、ファッション・ショーを2時間見てる感じ。

ということで、本作、観た後に何も残りません(個人的にはジミー・チュウを憶えたくらい)。でも、そもそも、映画観て何かを残そうと思うこと自体、ロマンチック過ぎると考える方々には、うってつけの映画でしょう。

2007/05/11

劇場版アニメーション 時をかける少女 <2006/日本>

劇場版アニメーション 時をかける少女 <2006/日本>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

うん、悪くない悪くない。ジブリが最近こけまくってるので、久しぶりにこの手のアニメで良質なものを観た感じがする。

評判通りですね。いいです、これ。

あんまりアニメ観ないから、何がいいのか、うまく言えないんだけど、たぶん、この映画、「引き算」ベースで作ってるんだと思う。で、それがとてもうまく機能したんだと思う。

つまりね、たぶんこの映画の主題は「時間ってものの人知を超える謎を身をもって体験してしまった人間の”前向きな”諦観」でしょ。理解できない不条理を、生まれて初めて体験した子が、どうやってそれを受容し、乗り越えていくか、ってことでしょ。で、とにかくそこを焦点化するために、それ以外の部分については、黒子に徹する。ありきたりな絵、ありきたりな声、ありきたりなセリフ。それら陰の部分によって、アニメにしてはありきたりじゃない奥行きのある物語を浮き立たせる。作戦がばっちり決まっていますね。

こういう筋肉質な映画を観ると、なんかすがすがしい気持ちになります。この監督(細田守)については、次回作も期待できそうです。

パッチギ!LOVE&PEACE <2007/日本>

パッチギ!LOVE&PEACE <2007/日本>

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ (採点不能、つーか採点したくない)

あぁぁ。がっかりし過ぎて、何も言えない。あぁぁ…。

前作「パッチギ!」は実は私の「心のベストテン第一位」(古い…)なんですよ。あまりに好き過ぎて、レビューなんて書けないくらい。たぶんもう30回以上は繰り返し観てて、そのたんびに、泣かされてる。

で、その続編のこれ、試写会行って来ました(ずいぶん前だけど)。

…空いた口が塞がらない、ってのはこういうことを言うんでしょうね…。あまりの駄作ぶりに唖然とした。

ネット上では、反日感情がどうの、歴史認識がどうの、って相変わらず喧々諤々、不毛な議論が前作同様、巻き起こっているみたいですが、そんなことはどうでもよくて…、”映画として観て”、これ、救いようのない駄作です。

物語が全部中途半端で焦点なし。せっかく、父親との血の繋がりやら、息子の病気やら、芸能界でのキョンジャの苦悩やら、おいしいネタがこんなにあるのに、全部、ちゃんと料理できず。

役者も役者でこれまたどうしようもない。アンソン役の井坂俊哉はただの気のいいあんちゃんで、なんかウルトラマンなんちゃらのなんちゃら隊員とかで出てきそうな感じ。キョンジャ役の中村ゆりはたしかにかわいいんだけど、かわいいだけ。明らかに意図してやってるアヒル口がやたら鼻につく…(笑)。

やっぱりさ、「パッチギ!」は青春映画であるべきなんだよ。3作目、作ってもいい。でも、頼むから、安易に物語を先に進めずに、「岸和田少年愚連隊」方式に変えてくれ。…でも、たぶん、もういくらやっても駄目でしょうね、これじゃ。1作目は奇跡だったんだ、と自分に言い聞かせて、これだけをこれからも観ていくことにします…。

はぁ。

ヨコハマメリー <2005/日本>

ヨコハマメリー <2005/日本>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

リアル嫌われ松子。逆説的だけど、これぞ映画です!

前から気になっていたこのドキュメンタリー。でもなんか、覗き見趣味のような不純な動機で観る自分も嫌だよなぁ、とか、横浜なんて別になんの思い入れもねぇし、とかなんだかんだで言い訳しつつ、なかなか手が伸ばせなかった、このドキュメンタリー。

意を決してようやく観ました。

結果はね、もうなんでもっと早く観なかったのか、ってほんと後悔した…。

手法はたしかにドキュメンタリーなんだろうけど、これぞ、映画ですよ。もう最後は泣けて泣けて仕方なかった。

話の筋はこんな感じ。

かつて、娼婦として横浜の街に立つ白い化粧に純白のドレスの老婆がいた。彼女のことを、人は、「メリーさん」と呼んだ。そんなメリーさんが、1995年に忽然と、横浜の街から消えてしまう。

で、メリーさんの人生とはどんなものであったのか描こうとしていくドキュメンタリーなんだけど、面白いのは、メリーさんの人生をメリーさん自身の言葉で語らせるのではなく、メリーさんに繋がる他の人間の言葉で語らせるとこ。ポジティブに語る人、ネガティブに語る人、実際にメリーさんと直接触れ合ったその感触を語る人、ただの噂レベルの伝聞情報で語る人、メリーさんを語りながらも次第に趣旨を忘れて自分の若かりしころの思い出話を始める人…。もう多種多様。でも次第にその雑多な言葉の集合が、メリーさん(の像)を紡いでいく。で、そこに横浜の風景の中に写るメリーさんの写真が頻繁に挿入される。はぁ、こういう不思議な人が昔いたんだなぁ、と、そんな感じ。

でね、そこで終わってたら、これ、ただの都市伝説ですよ。でもね、この映画、最後の最後で、そういう薄っすらとしたイメージ(メリーさん像)を無意味化する(どうでもいいものにする)圧倒的な映像を持ってきます。それが何かはネタばれになっちゃうので言わないけど、ここがこの映画の主題でしょう。やや冗長な中盤をこらえにこらえて、頑張ってでも、観るべきです。うまく言えないので、やたら大袈裟な表現になっちゃうけど、人が生きてるってことの重みというか厚みというか、そういうものをこれだけ訴えかける映像を、私は、これまで観たことがない。神々しいとまで、私は思いました。

この映画、真実を追究する類のドキュメンタリー、もしくは、社会問題を告発する類のドキュメンタリーとして観てしまうと、たしかに超駄作です。だって伝聞情報そのまま載せちゃってるし、路上生活者たるメリーさんの悲哀なんてまるでちゃんと描こうとしてないし…。

でもね、これ、映画として観たら、間違いなく傑作ですよ。マージナルな人のマージナルな人生をこれほど真摯に正面から描いた映画を私は他に知りません。

※ここまで褒めちぎっといて7点なのには訳がありまして…。インタビューに答える五大路子(メリーさんを題材にした1人芝居を演じる女優)があまりに芝居がかってて、うざい。他の登場人物全て、素の自分で語ってるのに、彼女だけ、違う。明らかに浮いてる。マージナルな対象たるメリーさんに私はこんなにスポットライトを当ててます、しかもこんなに柔らかくて暖かいスポットライトを当ててます、こんな私って、偉くないですか?みたいな嘘っぽさをどうしても感じてしまう。藤原紀香が醸し出すのと同じ嫌らしさを感じる。他がいいだけに、なんでこんな薄っぺらい人間を差し込んじゃったのか、不思議でしょうがない…。

2007/04/25

シュガー&スパイス 風味絶佳

シュガー&スパイス 風味絶佳 <2006/日本>

★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ (1point)

誰か教えて下さい。どうやったらこんな映画が公開できるのでしょう?

おいおいおいおいおいおいおい…。これはなんでしょう…。ここまで駄目だと、逆にワクワクしますね。一体どこまでやってくれるのかって…。

いつまでたっても「誰も知らない」を越えられない柳楽優弥に、いつまでたっても「パッチギ!」を越えられない沢尻エリカ。脈絡のないチェン・ボーリンに、1人浮いてる夏木マリ。頑張ってるのにいっこうに笑えないコメディに、センスの欠片もないセリフ。テレビドラマそのものの絵と、テレビドラマそのもののベタな展開。

ちょいと想像してみて下さい。柳楽優弥のあのボソボソっとした声でこういうナレーションが入る。

 いやよいやよも

 好きのうち

 っていうのは

 おとこの勝手な

 いいぶんなわけで…

鳥肌立つか、爆笑するか、どっちかでしょ、これは…。

頼む。頼むから、こんなどうしようもない映画に、あの奇跡のアンソンとキョンジャ(@パッチギ!)を一緒に出さないでくれ。

2007/03/23

SPUN <2004/米>

SPUN <2004/米>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

いい!”この手の映画”の中では、ひっさびさに、いいッ!

”この手の映画”ってひと括りにしちゃうのもどうかとは思うけど、なんとなくこういうジャンルってあるよね。古いとこだと「トレインスポッティング」、新し目だと石井克人「Party7」やら関口現「サバイブ・スタイル5+」。

このジャンルの中では、ほんと久々に良い!期待値の低さに助けられた感はないわけじゃないけど、それにしても、いい!!

この手の映画ってね、完全に私見だけど、「どこまでお馬鹿になれるか」っていう突き抜け具合と、「どこまで生活の痛さを描けるか」っていう切なさ具合のバランスが肝でしょ。ただ馬鹿やってても「ばかだねぇ~」で終わっちゃうし、痛いだけの映画なら腐るほどあるし。しかも、ちゃんと馬鹿やった上でじゃないと、痛さをちゃんと描けないってこともあるし。

でだ。

上に挙げた「Party7」も「サバイブ・スタイル5+」も嫌いじゃないんです。つーか、むしろ、好きの範疇に入る。でもね、なんかこう、煮え切らないというか、もう一息というか、もうちょい頑張れよ、というか、まあ、なんか足りないものを感じていたわけ。

で、この映画観て、何が足りてなかったのか、ようやく分かった。

「Party7」も「サバイブ・スタイル5+」も、ただ、馬鹿やってるだけなんだよね…、結局は。

その昔、「トレインスポッティング」に感じた思いとおんなじものを、このSPUNから受けた。そして、それって、上に書いた「お馬鹿」と「痛さ」の絶妙のバランス感覚なんだろう、とそう思う。

前半戦の突き抜け具合(ジョン・レグイザモのチ○コ靴下なんて、もう最高じゃない)と、後半戦のなんとも言えない痛さと切なさ(ブリタニー・マーフィーとジェイソン・シュワルツマンがドライブしながら、徐々にお互いの内面を吐露し合う…でも、お互いに自分の本当に言いたいことを吐き出しているだけなので、コミュニケーションは成立しない…なんて、もぅ…素敵すぎる…)。かと言って、「笑えて、泣ける」なんて安直なところには回収させず、むしろ「笑えないし、泣けない」…。でも、なんか、妙な重いものが心の底に残っている、そんな感じ。

お勧めです!

2007/03/22

イーオン・フラックス <2005/米>

イーオン・フラックス <2005/米>

★★★☆☆☆☆☆☆☆ (3points)

「シャーリーズ・セロン、綺麗だねぇ~」としか言えない映画。「それでも見る価値あり」、とはわたしには口が裂けても言えません。

大好きなシャーリーズ・セロン。サイダー・ハウス・ルールで惚れて、モンスターに痺れた。そんな彼女が、今回はSFアクション…。嫌いなんだよね、このジャンル。物語がないから。ってことで、だいぶ心配しつつ、鑑賞。

結果、あぁ、やっぱりね。心配した通りじゃん。

無意味なアクションに、ありふれたSF。はいはい、もういいよ、わかったからさ。

「今ここ」でないもの、「今ここ」にないもの、「今ここ」にいない人、を創作しようとする映画なんだからさ、映画の出来の全ては、製作者の想像力にかかってるわけですよ。で、逆に言うと、それが分かった上でこの映画作ってんだから、製作者は自分(たち)の想像力に相当自信があるんでしょ。…でも、これ、なによ?子供でも思いつく、使い古されたイマジネーション、だけしかないじゃん。とってつけたような「クローン」だの「不妊」だのにごまかされるほど、こちとら、お子ちゃまじゃないのよね。

ってことで、本映画、観るところ(=鑑賞に耐えられるところ)は、シャーリーズ・セロン(の美しさ)しかありません、やっぱり。

それしかないことを知った上で、「それでも観る価値あり」と思える人もいるんでしょう。

でも、そこまでいい観客にはわたしはなれませんね…。むしろ、これが「もしシャーリーズ・セロンじゃなかった場合」にどんなに救いようのない映画になってたかって想像しちゃって寒くなり、挙句の果てにそのしょっぱさにちょっと笑えてきて、シャーリーズ・セロンどころじゃありませんでした。

シャーリーズ・セロン、頼むから、出る映画を選んでくれ。

2007/03/19

裸足の1500マイル <2002/オーストラリア>

裸足の1500マイル <2002/オーストラリア>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

悪意ある悪に比べて、善意から来る悪のなんとたちの悪いことか。そんな救いのない悪に比して、子供たちの帰巣本能のなんと純粋で高貴なことか。

逃げて、逃げて、逃げるだけの映画。そこには何のひねりもトリックもない。だからこれを退屈って人も当然いるでしょう。

でもね、この映画、このシンプルなストーリーこそが、命ですよ。

物語がシンプルで、かつ、絵もシンプルなこと。それによって、この映画、以下のアイロニーが浮き上がる仕掛けになってるんだ、と、そうわたしは観ました。

ただ、母の元に帰りたい。だから、たとえそれが遠い道のりだろうが、ただただ、帰る。これ、帰巣本能ですね。私は、彼女たちに、”人間はどこまでいっても結局は動物であり、かつ、結局は動物であるがゆえに人間である”という逆説を見ました。

そして、その子供たちに比した場合の、白人文化の側のなんと非人間的なことか。自らの動物性を否定しよう否定しようとせんがため、文化文明に身を包み、弱者保護のロジックで武装する。しかし、その彼らの「正義」が行き着く先は、ただの圧迫と強制でしかない。”動物性を拒否すればするほどに、人間性からも遠ざかっていく”という逆説。

あぁ、こういう芯の通った根の深い人間の問題をこそ、映画は撮らなくてはならない。小手先のテクニックが先行した映画多き、現在の邦画。人がどんどん入るようになって、いまや、それらしく作ってあれば何でもありみたいな状態にも見える今の邦画の底の浅さが透けて見える。

2007/03/07

0:34 レイ_ジ_34_フン <2005/イギリス>

0:34 レイ_ジ_34_フン <2005/イギリス>

★★★★☆☆☆☆☆☆ (4points)

この映画、85分と短いですが、これ、凝縮して短くなったんじゃなくて、85分そこらまでしかネタが続かなかった、って感じだね。下らないので、相当暇な人以外、観る意味ないですね、これ。

ほんのちょっとの思いつき。作った本人は「これはすごい思いつきだ」と思っていたであろう超安易/超凡庸なる思いつき。そんな下らないことで、映画なんて作っちゃダメだよ。

<--以下、想像-->

・地下鉄で終電が行った後に構内に閉じ込められたら…、おもしろくない?
・だとしたら、なぜか次の電車が来ちゃうことにしない…、うんうん。
・で、構内で殺人鬼に追われる女…、あ、それいいね。
・でもさ、いくらなんでもただ追われるだけじゃ納得感ないからさ、とりあえずなんかそれらしい過去繕っとこうよ…、そだねぇ。
・じゃあさ、じゃあさ、とりあえずなんかそれっぽいからあ、えーと、”なにがしかの理由で今は地下に封印された謎の病院”…、お、それいいね!そしたら、”胎児の標本とか大量に保存してあることにしちゃおうよ、なんとなく謎っぽいっしょ、これ。
・”そこで産まれ外界との接触なしに育った男”…、完璧ジャンっ!
・あとは、適当に画面暗くしときゃなんとなくそれっぽいっしょ! …Yes!


…って、アホか。

2007/03/05

ワールド・トレード・センター <2006/アメリカ>

ワールド・トレード・センター <2006/アメリカ>

★★★★☆☆☆☆☆☆ (4points)

911がアメリカという国に与えた衝撃の大きさ、傷の深さが今ようやく分かった。あのオリバー・ストーンにこんなどうしようもない映画を作らせちゃうんだからね。

題材が題材だけに、悪口言いづらいですが…、あえて言います。

これ、まるでダメですよ。こんなもん映画じゃない、と極論したくなるくらい、最初から最後まで全部ダメ。なんか、低予算でやっつけで作りました、って匂いがプンプンする。

まず、脚本。お前、予算がないからってわざと閉じ込められてるシーン増やしただろ。そこに人間ドラマを感じるほど、こちとら優しくないよ。しかも、キリスト出すな。たぶん安易に「ゴドーを待ちながら」(@ベケット)を下敷きにしたんだろうけど、失礼だよ、それ、ベケットに。

はい、次。カメラ。場面を暗転させる手法は「ブラッディ・サンデー」(@ポール・グリーングラス)の真似か?まぁ、それは他の映画でもよくやる手だからいいんだけど…、全然決まってないから観てて痛々しいぞ。目が痛いだけ。

最後、役者。特に海兵隊員!お前は…、誰だ?人物の背景描写が全くないから、お前、ただの軍事オタクじゃねぇか!…あ、これも結局、脚本か…。まぁ、いいや。

ってことで、全部ダメ。

これ観るくらいなら、「9・11 N.Y.同時多発テロ衝撃の真実」(@ジュール&ギデオン兄弟)の方が、1000倍まし。危険な現場へと自ら入っていく警官(こっちの映画は主に消防士だけど)の勇気も、身に迫った恐怖を実際にはそれほどリアルに感じられない、という恐怖も、人間が地面に叩きつけられるどうしようもないくらいつらい音も、全部、こっちの方が上。

アメリカはこの事件を咀嚼し、消化し、映画へと昇華するのに、あと10年はかかるんじゃないだろうか?…というよりも、それが正しい姿なんじゃないだろうか?

2007/02/26

嫌われ松子の一生 <2006/日本>

嫌われ松子の一生 <2006/日本>

★★★★★★★★★☆ (9points)

悲しい話を悲しく描くなら小学生にでもできる。悲しい話を可笑しく描くなら中学生にでもできる。悲劇や悲喜劇へと安易に回収されてしまうことを徹底的に拒む、そんな奥行きのある物語は中島哲也にしか撮れない。

すばらしい!もう何回言ってもいいけど、すばらしい!!

ここ10年の邦画の中でも1,2を争う超名作。もう奇跡でしょう、これは。

でもどうも一般の評価は芳しくないみたいね。いわく、「泣くに泣けない」「笑うに笑えない」。正直、アホか、と思う。どっちに転んでも、この映画、なんの価値もなくなっちゃうじゃん。

思うに。

”悲しい物語にポップな絵を乗せた”のは、わざと。映画が安易な涙(による安直なストレス解消)へと収束化してしまうことを拒絶せんがため。この意味で、映画が悲劇へと回収されてしまうことを否定する。

また、”悲しい物語にポップな絵を乗せて展開する物語の終点に圧倒的な悲劇を持ってきた”のも、わざと。悲しい話を笑いながら消費してしまう安直な悲喜劇に対する否定。観た後に何も残らない「ちゃんちゃん♪」を拒否する。

だから、観客は取り残される。なんとも言えないいやぁな感じが残る。泣けず、笑えず。「だから何?何が言いたいの?」ってどうしても、言いたくなる。

でもさ、”泣けるだけの人生”やら”笑えるだけの人生”なんて、そんなもん、ないでしょう。そして、何を言いたいか、そのメッセージがはっきりしてる、そんな人生なんて、あり得ないでしょう。人の人生は他の人に対して、何とも言えない白黒がはっきりしない曖昧な意味を持ち、人はそれを自分なりに咀嚼して咀嚼して、いい意味でも悪い意味でもそこから学んでいくんでしょう。

その意味で、人の「一生」を描くとしたら、この方法しかないんだよ。もちろん、その”適切な”描き方は今の時代の期待値に合致しないかもしれない。でも、その描き方以外のどの方法も、全てどこか安易な割り切りを前提とする。

難しい道を選択し、それを形にした、中島哲也に最大級の賛辞をおくりたい。

2007/02/25

イノセンス <2004/日本>

イノセンス <2004/日本>

★★★★★☆☆☆☆☆ (5points)

ごめんなさい、おじさんにゃ、何がなんだか、さっぱり。話についていけんかったよ。

この手のアニメって苦手でさ、ずっと喰わず嫌いだったんだけど、一念発起して、いっちょ観てみようかと、そう思って観てみました。

…でもさ、寝ちった。

だって、物語に全くついていけなかったんだもん。

絵が綺麗だし、CGも素敵でしたよ、たしかに。

でも、わたしゃ物語を観るために映画観てる人間なので、物語を理解できない映画を観続けられるほど忍耐強くないんだよね。

2007/02/24

仁義なき戦い <1973/日本>

仁義なき戦い <1973/日本>

★★★★★★★★☆☆ (8points)

最高です。文句なしです。何度観ても痺れますね。

「癒し系の映画」なんてのは言葉としてそれ自体矛盾しておる、とわたしは常々思っています。日常だろうが、非日常だろうが、そんなことは何でもいいけど、ある種のテンションの高ぶり(熱のようなもの)を見せてくれないと、満足できるわけないじゃん、と、まあ、いつもそう思って映画観てます。極論するとね、その熱が向かう方向なんて、なんでもいいのよ。それが、色恋沙汰に向かおうが、暴力に向かおうが、変態に向かおうが。どっちに向かってもいいけど、ちゃんと突き抜けてくれればそれで良し。

その意味じゃ、これ、いつ観ても、何度観ても、その熱に打たれます。エネルギーが向かう先は、終わりのない暴力なんだけど、暴力がどうのこうのの前にまずそのエネルギーの大きさに、痺れます。

うまい説明なんて最初から諦めてますが…、とにかくこれだけは観とかないとまずいでしょう。

しかし、この当時の役者って、みんなすご過ぎる。梅宮辰夫なんて今じゃただのアンナパパor漬物チェーンのオーナーさん(今もあんのかな?)だけど、まぁ~、昔はすげぇ役者だったんだね…。

2007/02/23

フェア・ゲーム <1995/アメリカ>

フェア・ゲーム <1995/アメリカ>

★★★★☆☆☆☆☆☆ (4points)

100%男目線で言うと、シンディ・クロフォードに萌えられるか否か、この一点に全てがかかっている、そんな映画。シンディ・クロフォードのPVでしかありません。

シンディ・クロフォードってたしかに綺麗だけど、ちょいガサツな感じしません?大雑把というか。なので、正直、ちょっと苦手なんですよね、私。一言で言うと、萌えません…。

そんな私には、これ、ただのB級映画にしか見えませんでした。観るべきところはほぼ皆無。気付いたら途中で寝てました。

ま、彼女に萌えることができる男子には、価値のある映画なのかも、とは思う。

でもさ、素朴な疑問なんだけど、こういう映画、そもそも女の人ってどういう目線で観てるんでしょう?

凡庸な物語にチープな映像、とってつけたかのようなまるで萌えないエロ。唯一、シンディ・クロフォードの美貌(あたしゃ、そうは思いませんが)、それだけが救い。そんな映画、女性にとって、暇つぶし以外のポジティブな意味を持つのでしょうか?

2007/02/22

ユーロトリップ <2004/アメリカ>

ユーロトリップ <2004/アメリカ>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

いやぁ~、馬鹿だねぇ~。笑わしてもらいました。

ハイテンションのマンUサポーター(@ロンドン)、ロボットパントマイムのおじちゃんとのカンフー対決(@パリ)、電車の中のオカマ親父(@イタリア、か?)、極めつけは男だらけ、チ○ポだらけのヌーディストビーチ(@あれはどこだ…?)、笑いましたね。いいね、こういう馬鹿映画。

でも、映画で笑ってもねぇ。あたしゃ、そんなの求めて映画観てんじゃないのよね。2時間近くもこんな下らないものを見続けた自分に対する軽い自己嫌悪を否定できず…。

2007/02/21

わが道 <1974/日本>

わが道 <1974/日本>

★★★★★★★★☆☆ (8points)

はい、これすごいです。こういうのをドラマって言うんですよ。


極端なナナメ目線であることは百も承知ですが、私はこの映画、ある意味、究極のエロ映画だと思います。

死んだ旦那(殿山泰司)の身体(死体)を粗末に扱ったことに憤る妻(乙羽信子)。

これをまっすぐに観れば、それが物体としては死んだ身体であったとしてもそれは過去に人間の魂を入れていた入れ物であって、人間の尊厳はそこにまでちゃんと及ぶ、それを粗末に扱う(医大の解剖実験に勝手に使う)なんて許されん、告発してやる、っていう一般的な話になる。それは分かる。その目線でいうと、これ、普通の”社会派”の物語。

”社会派”ドラマとしても、これ、一流です。でもね、なんかそこに収まらない不思議な情念の深さのようなものがある感じがして、それがこの映画の奥行きになっている気がした。そして、どちらかというと自分はそっちに痺れたんだよね。

で、それって何なんだろうって考えてみると、ここだいぶ飛ぶと思いますが、社会的に許される許されないなんていう一般的な善悪のレベルじゃなくて、妻の旦那の身体に対する性愛レベルの情念じゃないかな、と。旦那の身体は私のもので、私はその身体をこれまでも愛でてきたし、たとえそれがただの有機物になったとしても、今も愛している。人間の尊厳とかそういう小難しいことは分からないけど、とにかく、私が愛した夫の身体を私に返せ。

東北の田舎で暮らす老いた妻(乙羽信子)が東京にまで出張っていって、役人たちを告発する。そこまでのことを妻にさせる駆動力は、尊厳うんぬんなんていう社会派の憤りじゃ足りなくて、何か別のもっと深い部分の情念が必要、だと思うわけ。で、ごく個人的な性愛に端を発する情念と怨念をそこに補完する。それって、私にはすっごく納得できた。

客観的な視点と主観的な視点とが明に暗に絡み合った素晴らしい物語。こういうのをドラマっていうんでしょうね。

2007/02/19

ローレライ <2005/日本>

ローレライ <2005/日本>

★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ (1points)

こんな映画を恥ずかしげもなく製作できてしまう国、しかもこんな映画にちゃんと人が入ってしまう国に生まれてしまったことを少々後悔しました。

ひっでぇ~~~~。あまりのひどさに、どこまでやってくれるのか、ちょい興奮した…。

中途半端な恋愛物語(妻夫木聡/香椎由宇)に中途半端な戦闘シーン(金かかってないちゃちなCG)、中途半端なSF(「最終兵器ローレライの中枢は人間」て、おい)に中途半端な国威発揚(俗情に媚び過ぎ…)。

はい、これ、全部一緒に食べて、おいしいと思う人、手挙げてください。

「製作:亀山千広」で、全部納得しましたが…。

もうやめようよ。恥ずかしいから。

2007/02/18

青の炎 <2003/日本>

青の炎 <2003/日本>

★★★☆☆☆☆☆☆☆ (3points)

なんだこりゃ。もう笑っちゃうくらいに全部ダメ。

冒頭から「あれ」っていう違和感があったんだよね、実は。

主人公(二宮和也)が自転車(ロードバイク、か?)で通学するときの画面の構図。背景は海、でそこから自転車に乗った二宮くんが坂道を駆け上がってくる。急なのぼり坂なので、徐々に二宮くんが現れてくる。一言で言うと、「ふ、ふりぃ~~」。「大丈夫か、蜷川幸雄…?」。

でね、ちゃんと最後まで観ましたよ。だいぶ苦しかったですが。

結論だけ言うとね、もう久しぶりに観たどうしようもない映画。脚本、役者、絵、演出、全部もう笑っちゃうくらいダメ。ここまでダメだと逆に痛快。

いちいち書く気力もないけど、1つだけ書いておくと、二宮くん。最近じゃ「うまい、うまい」って上げられてるそうなので、期待して観てたんだけど、全然下手くそじゃん。人殺しちゃう役なのに、狂気がちらりとも見えない。壊れゆくその過程が観てるこっちにまるで伝わってこない。「青の炎」って「若くて幼くてそれゆえに綺麗な、狂気」のことだって思ってた…俺が間違ってたのか?!これ観せられたら、今の持ち上げ方も、結局は、「”ジャニーズなのに”演技がうまい」っていう下駄はかされた括弧つきの評価なんじゃねぇの、って勘繰っちゃいます。

以上。

2007/02/11

パプリカ <2006/日本>

パプリカ <2006/日本>

★★★★☆☆☆☆☆☆ (4points)

あぁ、こりゃ、ダメだわ。映画の中で、ヒロイン(敦子)がダメダメ科学者に「あなたはいっつもそうやって”やりたいこと”だけやって、”やらなきゃいけないこと”はなに1つやらない。そうやってずっとマスターベーションしてればいいのよっ」みたいなことを言うシーンがあるんだけど、「え、それこの映画のことだよね?」って感じ。

※思いっきりネタばれしてますので未見の方はご注意を。

「千年女優」「東京ゴッドファーザーズ」の今敏。

特に「東京ゴッドファーザーズ」なんてもう奇跡的なくらい良かった。アニメには珍しく(あんまり観てないから単にわたしが知らないだけなのかもしれないけど)、ちゃんと物語が成立してる。しかも、飛び道具的ファンタジーに逃げ込むことなしに。場面設定やら、人物描写やら、物語の背景やら、そういう面倒な本の土台作りをちゃんとできる。それって、アニメにゃ稀有だ、とそう思ってました。

もっと言うと、宮崎駿の後をとって、”オタク以外にもちゃんと響くアニメ”を描いていくのは彼しかいない、とまでわたしゃ、思ってましたよ…。そこまで評価してるくらいだから、今作、そりゃ、どうしても期待しちゃうじゃない。

でもよ…。一口で言っちゃうとさ。

期待外れ、以上。

なんだよね。

絵も綺麗だし、アニメでしか描けない絵を十分に堪能させてももらえました…、その意味じゃ楽しめましたよ、そりゃ。

でもね、中途半端な感じがどうしても拭えない。

何が中途半端かって、以下2点。

その1。エロが中途半端。中途半端であるがゆえに、下品。

分かりやすく言うと、”とってつけたかのようなエロ”。

ヒロイン(敦子)の裸を描きたいがためだけに、「囚われの身に」的なシーンを挿入。前後の脈絡もなしに最後、理事長と戦う時に、パプリカが赤ちゃんの状態から理事長を吸い込みつつ徐々に成長していき…、おいおい、これもただパプリカの裸を描きたかっただけじゃねぇか!しかも、なんで乳首がそんなピンクなんだよ…。あぁ、オタクの、オタクによる、オタクのためだけの、とってつけたエロ描写。品がないちゅうのはこういうこと言うんだろうね。

どっかでも書いたけど、やるなら、ちゃんと、やれ。やれないなら、やるな。

その2。ファンタジーが中途半端。

物語も成立せず、エロで痺れさせてくれるわけでもなく、じゃあ、もう逃げるところなんてファンタジーしかないですよ(わたしは嫌いだけど)。でも、これまた、なんか既視感に溢れた映像のオンパレード。コピペの連続。

例の電化製品やら人形やらのパレードは平成たぬき合戦or千と千尋。所長がパプリカに侵食されて肥大化するシーンはもののけ姫のデエダラボッチ。最後の赤ちゃんが肥大化するとこはAKIRA、肥大化したパプリカが理事長と戦うシーンはさながらウルトラマン…。はぁ、君の想像力はその程度かい…。 あたしゃ、これをオマージュって呼んであげられるほどいい客じゃないです。

今敏、頼むから、技に溺れないで、周りの高い評価にも溺れないで、オタクにおもねることなく、ちゃんと「大人にも観れるアニメ」をもう1回作ってくれ。

2007/02/10

いまを生きる <1989/アメリカ>

いまを生きる <1989/アメリカ>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

伝統やら規律やらの壁がちゃんと存在することは、それを乗り越えていく人間にとってある意味、幸せなことなのかもしれない。

「ふ~ん、よくできた映画ね」。その一言に尽きちゃう。

でも、わたしも三十路前の社会人なので、世に言われてるほどこの映画が自分に響かないその理由を考えてみたりした。

で、結果、そうじゃないかな、と思ったこと。

結局、自分の実体験として、こういう「ちゃんとした」学校で青春時代を過ごしたことがないから、この生徒たちがぶつかってる壁の重みやらが分からんのよ、正直。わたしが通った学校なんて、いわゆる私立の進学校なんだけど、ほんと自由で、制服もないし、髪染めてもOK。ピアスあけても「痛くねぇのそれ」ってな感じ。だから、伝統と規律を前にうだうだ逡巡する生徒たちの葛藤なんて、理解し切れちゃいないわけです、実際のところ。そりゃね、分かる気はするよ、頭では。正直、ちょっと泣いたりもした…。でも、やっぱり震えないんだよね。なんか他人事なので。

盗んだバイクで走り出しもせず、校舎の窓も割らずに、尾崎豊に震えた(つもりになってた)日々も、振り返ってみれば、たしかにあった…。でも、それってあくまで、「そんな自分が好きだったんだね、そのころは」、って一言に集約されちゃうくらいの出来事で…。

もはや、自分の体験に立脚しない底の抜けた物語に震えられるほど、ロマンチックにゃなれんのです、わたし。

2007/02/09

リンダ・リンダ・リンダ <2005/日本>

リンダ・リンダ・リンダ <2005/日本>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

ゆるいゆるいって批判は全くナンセンスでしょう。だって、この映画、「バンドを組む→文化祭で演奏する」っていうひと昔前だったらお祭り騒ぎの出来事でも、もはや、ゆるくならざるを得ない今の高校生の日常(の痛さ)を描いた映画だもん。

文化祭で演奏することを目指してバンドを組む。で、日々練習の毎日、なんだけど、この日々のテンションが低い低い。

おいおい、それでいいのかよ、って感じ。バンドだよ、文化祭だよっ、おじさんの世代じゃ、そりゃもう一大事だよ…、それでいいのかよ、って。でね、その時点でふと思うわけ。あ、これ、わざとゆるいテンションで描いてるのね。最後の最後で思いっきり跳ぶために今は助走の時間帯なわけね、って。

で、最後、文化祭ですよ。はい、そろそろ爆発するぞ~、って観てるとさ…、これが爆発しそうでしねぇ~のよ、全然。跳びそうで跳ばないのよ…。えぇ~、これだけかよ~、映画の80%を占めるあの助走はなんだったのよぉ~、あれに耐えたおれの辛抱は報われないのかよ…。そんな感じ。

でもね、そのときまたふと思うわけ。あ、これ、これもわざとだ…。跳べ跳べと期待してみてるこっちに、「跳べるわけねぇだろ…」って鼻で哂ってる感じ。「現実はそんなにロマンチックじゃないよ」って最後にハシゴを外された感じ。

悪くないですよ。

2007/02/08

12人の優しい日本人 <1991/日本>

12人の優しい日本人 <1991/日本>

★★★★★★★★★☆ (9points)

文句なしの傑作。「いるいる、こういうやつ」ってキャラクターの連続。人間観察の妙。ここまでいくと職人技を超えて、神の域でしょう。でも、そんなコメディの裏側で、人間が人間を裁くということの難しさや危うさをちゃんと描いてるところに、三谷幸喜の奥行きを感じる。

いろんなところでもう何回も褒められてきた作品ですので、もういいかとも思いますが、絶賛しときます。

これ、すごいです。絶対、観るべきです。最近の三谷幸喜の作品なんて観なくていいから、これだけは観とくべきです。

表向きはコメディ。日本にも陪審員制度があるとの前提で、ひとくせもふたくせもある面々がああでもないこうでもないと、殺人事件の被疑者が有罪か無罪かを議論する。まぁ~、これが、個々のキャラクターがよく描けてる。ロジック無視で精神論で押しまくるやつあり、声の大きい他人の意見にすぐ擦り寄るやつあり、ちょっと斜に構えてお前らとおれは違うっていうメッセージを吐くことだけに執念を燃やすやつあり、とにかく早く会議を切り上げて帰ることだけを考えるやつあり。日々の会社での会議なんぞを思い出し、「あぁ、こういうやついるよなぁ~」の連続。人間観察もここまでいくと、ちょい怖いですね。圧巻です。三谷幸喜ちゅう人はいつも何考えて、人間と付き合ってんでしょうかね。

でもね。それだけだったら、たぶん、この映画、せいぜい★7つくらいでしょ。観終わって、はい、楽しかった~、で、おしまいだもん。

個人的な意見ですが、この映画、何がすごいって、コメディの裏側で、表立って主張してはみせないんだけど、人間が人間を裁くことの難しさや危うさをちゃんと描いてるところ。人が人を裁くっていうけど、裁く側の人間のレベルなんてこんなもんよ、ってとってもシニカルにみせてくれる。民主主義のありのままの実態、って言ったら大袈裟かな?でも、民主主義以上の仕組みを考えることができない以上、ぼくらはここから出発するしかないのよね、ってわたしはそこまで考えちゃいました。

陪審員制度というあり得ない設定がもはやあり得なくなくなった今にこそ、もいっかい、この映画見直してみるべきでしょう。

2007/02/07

スクール・オブ・ロック <2003/アメリカ>

スクール・オブ・ロック <2003/アメリカ>

★★★★★★★★★☆ (9points)

大好きです。何度も繰り返して観ていますが、ステージで黒人の太った女の子が歌い出すところで、わたし泣きます。自分の涙腺がもはや信じられません。

最高ですね。

「いまを生きる」なんかより、こっちの方に、より強く、”人生を、今を、ちゃんと楽しめ”ってメッセージを受け取ってしまうのは、わたしだけでしょうか?

ジャック・ブラックには可笑しさを超えて、神々しささえ、感じちゃいます。

2007/02/06

運命じゃない人 <2004/日本>

運命じゃない人 <2004/日本>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

素直におもしろいですよ、これ。でも、脚本家の「これ、うまくない?」っていう「したり顔」が画面から滲み出ちゃってるので、好き嫌いは分かれるでしょうね。

脚本がよくできてます。複線を張りまくり、それが最後にちゃんとした形で収束します。うまい、です。

でも、それがこの作品の、いいところでもあり、また悪いところでもあり…。

こういう脚本勝負の映画(低予算だからそうならざるを得ないのは分かるんだけど)って、どうしても作家さんの技巧とそれをなんか見せびらかせてるような「してやったり感」を感じちゃうんだよね。「どう、これ?うまくない、おれ?ね、うまいしょ?」、みたいな。たしかに、うまいよ、そりゃ。でも、やっぱり、「だから、何?」って言いたくなる自分がどこかに、いる。ソフトウェアのプログラミングじゃないだから、そんな細かな「精緻化合戦」してどうなるよ、って。

でもね、そんなネガティブな思いをどこかに抱えつつも、素直に楽しめました。でも、あくまで、「楽しめた」ってだけで、後に何が残るわけじゃありませんが…。

2007/02/05

シリアナ <2005/アメリカ>

シリアナ <2005/アメリカ>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

分かりづらいことをちゃんと分かりづらく描くって結構勇気のいることなんじゃない?

この映画、わたしはとっても良いと思いました。

たしかに登場人物はやたら多いし、彼らの間の関係性もややこしいし、これといった主人公もおらず、したがって感情移入もへったくれもないし…、でもね、これってこの映画の「いいところ」だよ、全部。

石油利権に群がる得体の知れない連中と、その間で繰り広げられる暗闘を、分かりやすいドラマにしちゃっちゃぁ、おしまいでしょ。だから、これ、この方法しかないんだよ、ちゃんとこの題材を表現するには。っていう視点で見ると、この映画、良いです。

やたら分かりやすい安易なドラマの量産される中、観る側の期待値としても「分かりやすいことが前提条件」みたいな空気(分かりやすくないと感情移入できないし、感情移入できないと泣けないし、泣けないと映画観る意味ないし…、みたいな)が漂う中、こういう分かりづらい映画をちゃんと撮れるって、偉い。

2007/02/04

ゆきゆきて、神軍 <1987/日本>

ゆきゆきて、神軍 <1987/日本>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

なんか分からないけどスゴイものに震える感覚。

奥崎謙三のベクトルが向かう方向性(暴力)は共感できないが、そのベクトルの長さ(強度)には正直震えた。共感するとかしないとか、理解できるとかできないとか、そんな範疇じゃないところで、なんかすげぇ…、と思った。頭でっかちになった世の中で、それでも人間は、人間のことば(論理的な正しさやら倫理的な正しさやら)にじゃなくて、その人の思い(情熱やら情念やら怨念やら)に動かされる生き物なのね…。

映画のいい所ってそういう「なんかよく分からない(=説明できない)けどすごい」ものを説明することなしに映像として提示できることにあるんじゃない?これ、ただただ「変なおじさん」を追いかけて撮り続けただけの映像なので「映画としては面白くない」とか言われてるけど、よくよく考えてみると映画の王道は踏み外してないんじゃないかな。

2007/02/03

ブラディ・サンデー <2002/イギリス・アイルランド>

ブラディ・サンデー <2002/イギリス・アイルランド>

★★★★★★★★☆☆ (8points)

怖い映画です。何が怖いって、市民を無差別に撃ちまくるパラシュート部隊の人間たちの、その小市民ぶりが、怖いです。そして、さらに、観てる自分も、状況次第で、彼ら同様の行動をとるかもしれない、その可能性が、怖いです。

鑑賞前の事前情報は、U2の「SUNDAY BLOODY SUNDAY」と、そこから連想される「デモ隊と警官の衝突でとんでもないことが起きたんだろうなぁ」というごくごく素朴な想像、それと、ベルリン映画祭金熊賞受賞ということ、のみ。

実はあんまり期待しないで観たのですが、正直、驚いた。

市民側と軍隊側で暗転する画面、手持ちカメラの臨場感、エンドロールの真っ暗な画面に流れる「SUNDAY BLOODY SUNDAY」などなど、痺れた箇所を挙げたらきりがないくらい。

でもね、そういう瑣末なことよりね、この映画、何がすごいって、ちゃんと物事の不条理を描けてるところ。そして、不条理を何かに回収しちゃうのではなくて、不条理を不条理としてそのまま描いているところ。

軍隊側に絶対的な悪人を置かず、あくまで、臆病で保身的で、それゆえに暴発しやすい小市民の狂気を描く。鍛えられたパラシュート部隊とはいえ、ひとりの人間である、という前提をけして踏み外さない。そして、人間であるがゆえに、時に、無意味な狂気へ至る。まさに、アイヒマンですな。例えば、この映画に、イギリス政府の陰謀なんて要素が入ってきちゃったら、もう台無しだが、そういう安易に流れないところに、感動した。

これぞ映画です。

2007/01/19

グッドナイト&グッドラック <2005/米>

グッドナイト&グッドラック <2005/米>

★★★★★☆☆☆☆☆ (5points)

エドマローがどうとか、マッカーシズムがどうとか、メディアがどうとか、そんなことただのネタでしょ、この映画。白黒の画面の中でマローがくゆらす煙草の煙の美しさに痺れる、それが正しい見方じゃない?

映画に物語を求めるわたしはこの映画、評価しません。だって、マローが戦ってるはずのマッカーシズムがまるで描けてないもの。敵を描かなくてどうするよ。観てるこっちに劇中与えられる情報って、極論すると、マッカーシー役の俳優のいかにもキモい顔だけ、じゃん。しかも、なんかそれほど苦しまず、簡単に本来強敵であるはずのマローに打ち勝っちゃうし。物語としては完全に駄作です。

でもね、ふと考えてみるとさ、↑のようなことは、作る側は百も承知なんじゃないかな?百も承知で、「だから何?」って思ってる、そんな気がする。

すごいうがった見方なのかもしれないけどさ、以下のように考えると、しっくりきた(少なくともわたしは)。

作り手が描きたかったのは、「マッカーシズムによるメディア弾圧とそれに抗うエドマローの孤独な戦い」なんかじゃなく、「マッカーシズムによるメディア弾圧とそれに抗うエドマローの孤独な戦い」という題材をネタに(彼らが昔見た)エドマローのTVショウの白黒のお洒落な画面を再現したかっただけなんじゃない?あの当時のあの画面て格好よかったよね。そうそうマロー渋くてさ。じゃ、作っちゃおうよ、映画で。うん、そうしよ。…みたいな。

そう考えるとさ、やたら煙草を吸うシーンが多かったのも納得いかない?だって、白黒画面で映し出される煙草の煙って、見とれるほど綺麗だもん。

2007/01/18

ゆれる <2006/日本>

ゆれる <2006/日本>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

悪くないです。でも言うほど良くもないです。

どっちつかずの感想ですみません…。でも、これが本当のところ。

たぶん原因は全て、観る前に「原作(?)」を読んじゃったこと。この本、(当然だけど)映画のストーリーのまんまだから、全部、観る前から分かっちゃってるわけですよ、こちとら。だから、映画で描かれる物語にはまるで集中できず(つーか、「本と一緒だね」ってことを2時間確認し続けてただけで…)、香川照之きもいなぁ~(=うめ~なぁ~)とか、真木よう子、パッチギやらベロニカやらでいい演技してたけど、ちょい花があり過ぎてこの役(智恵子)はミスキャストだわとか、オダギリジョーは「アカルイミライ」のオダギリジョーが一番好きだなぁ~とか…、要はど~でもいいことず~っと考えちゃって…。

…と、ほぼ原因がわたしにあることは間違いないんだけど、不敬を承知であえて言うと、物語全部分かっちゃってるわたしでさえも画面に見入らせるような「絵」がこの映画になかったことも事実、です。

2007/01/17

オープン・ウォーター <2004/米>

オープン・ウォーター <2004/米>

★★☆☆☆☆☆☆☆☆ (2points)

サメに喰われる恐怖を描いた映画じゃないと思ったら、結局、サメに喰われる恐怖を描いた映画だった。

これ賛否両論の意見があることを知った上で、耳年増になった状態で観ました。ストーリーもある程度、分かってました。

でね、色んな人が「これこそが本当の恐怖だ」って言ってたもんだからさ、海に放り出された2人が、サメの恐怖に怯えながら…、ってのをフックに使いつつ、でも、本当に怖いのはそれじゃなくて、実は別のところにあるのよ、って語ってくれる映画だと思ってたわけ。で、それは観にゃならん、と。

そういう視点でず~と観てたんだけどさ…、結局、その「別のところにある恐怖」が一向に語られないまま、気付いたら、エンドロール。正直、「えっ」って感じ。「なにこれ?ただのサメものじゃん」て。「みんな言ってた本当の恐怖って、ただのサメ?か?」て。もう軽い放心状態。

ま、もしかしたら、そういう映画だって思ってたのは、ただのわたしの勘違いなのかもしれないけど…、勘違いにせよ、サメに喰われる話って、そんなに怖いですか?わたしは「人間が一番怖い」っていうありふれた言い方に、とてもとても強く首を縦に振るタイプの人間なので、動物および人間以外の物体(幽霊とかね)を持ってきて、「ほら、怖いでしょ」っていう映画には、正直、「この映画撮ってる人たち、馬鹿なんじゃないか」と思ってしまうのです…。たしかに「びっくり」はしますよ。でも、「怖く」はないです。

だから、この映画も、「近づきつつある見えないサメの恐怖…で次第に壊れていく人間…という恐怖」をちゃんと見せてくれると思ってたのに…。

これじゃただの「ゆっくりとした&静かな、JAWS」じゃん。喰われるまでのスピードを長くする、および、過剰な効果音を消す、なんて2つの思いつきに、「本当の恐怖」を感じるほど…、人って単純じゃないんじゃないかな?

※ちなみにこの映画、「実話疑惑」に多くの人が喰いついてますけど、わたしは、「そんなことどーでもいいんじゃないの?」って思ってます。だって、例え、実話であったとしても、映画って作り物の域はどうしても出ないし、出る必要もないし。

バーバー吉野 <2003/日本>

バーバー吉野 <2003/日本>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

いい意味でも悪い意味でも、安心して観れる”こじんまり”とした映画。

荻上直子の長編デビュー作。デビュー作だってのにほんと安心して観れる。詰め込み過ぎてひっちゃかめっちゃかになったり、逆に狙いすぎてすっかすかになったりする…気配が、全然ない。うまくまとまってます(ちなみにこれは「かもめ食堂」でもおんなじこと感じた)。

なんて言うか、プラスの方向にも、マイナスの方向にも、観てるこっちの期待を裏切らない、そんな感じ。寅さんやら、水戸黄門やらに、今の時代のシニカルな笑いをほんのちょっぴりまぶした、そんな感じ。

正直、わたしは楽しめました。

…でも、ちょい立ち止まって考えてみるとさ。それって、いいのかな…?

たしかに観てて心地いいんだけど、なんか「それだけ」感も、いなめない。しかも、デビュー作、でしょ。こっから、この監督さんは何を撮りたいんだろ?相当うがった見方かもしれないけど、この監督さん、ただうまくまとまった映画を撮ることだけしか考えてないんじゃないだろか?特にこの映画の後の「かもめ食堂」が「あぁ、やっぱり」って感じの”こじんまり”系だったので、わたしの勘繰りはますます強くなっちゃいます。

小さくまとまった映画なら、大きく破綻した映画の方が「まだまし」だって感じてしまうのは…、今の時代状況からすると、それって、ある種、ロマンチック過ぎるのでしょうか?

2007/01/15

鉄コン筋クリート <2006/日本>

鉄コン筋クリート <2006/日本>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

考えながら見ちゃいけない映画ですね。ビール買ってかなかったことを後から猛烈に後悔しました。

※思いっきりネタばれしてますので未見の方はご注意を。

今回はDVDじゃなくて、映画館に見に行ってきました。東京国際映画祭で見たかったんだけど、時間が合わずに観れなかった、鉄コン筋クリート。

ネットでの評価を見てみると皆さんほぼ以下の論点に焦点化してるみたい。

・松本大洋原作との比較
・声優の出来

どっちも賛否両論あるみたいだけど、わたしはPositiveな感想を持ちました。前者なんてよくぞここまで忠実に再現したって感じの絵になってたし、後者もあんまり違和感は持たなかった。違和感持たなかったというよりも、むしろ、蒼井優(シロ)には正直、ちょい感動したくらい。

ちょいNegativeなこと言うと、クロ役の二宮和也があんまりうまくない。クロの魅力は、あぶなっかしさ(溢れんばかりの狂気をシロへの優しさでなんとかギリギリ包み込んでる、けど、それが時々染み出すように出てきちゃう、みたいな危うさ)にあると思ってたけど、ここの表現が稚拙。なんか声聞いてるとただのお兄ちゃんじゃん。

でだ。

問題は、(上記のクロの声の良くなさとも関係するんだけど)、クロの狂気の描き方が、ちょっと安易、かつ、ちょいレトロ過ぎねぇ~か?、ってこと。クロに対してクロに内在する狂気を「イタチ」というかたちで外部化して表現しちゃう。原作が書かれた1990年代中ごろなら、いいよ。こういうの新鮮味があった時期だから(ACブームなんて、ありましたね、そういや)。でもさ、2007年になってこれそのまんま観せられても、正直、「もう、その方向性、飽きた」ってちょい食傷気味。飽きた、ってのが率直な感想だけどさ、表現の質から考えても、内側にある隠れたものを外に無理やり出してお客さんに観せる、ってちょっとレベル低いんじゃない?二重人格モノのドラマとか流行ったでしょ、昔。あれ、ただ単純に、簡単だからだよ。観せるのが。もうやめにしませんか?

とまぁ、ややこしいこと書きましたけど、アニメ映画としては、よくできてます。アニメにしかできない絵(町を上から俯瞰しながら、そこから下りていって路地裏に入る、みたいな)を存分に楽しめます。蒼井優の出来に震えるだけでも、1800円の価値はあるでしょう。

その意味じゃ、↑みたいな野暮なことをあれやこれや考えながら観るのは、この映画の見方としては正しくないんだろうね…。酔っ払いながら観たら、たぶん、最高な映画です。

2007/01/13

ナインス・ゲート <1999/米>

ナインス・ゲート <1999/米>

★★★☆☆☆☆☆☆☆ (3points)

B級映画ちゅうのはこういうのを言うんだろうね。

雰囲気はたしかにある。でも、一言で言うと、それだけ。

あとは、完全なるコメディ。

でも、雰囲気がある手前、笑っていいのか場の理解に苦しむ感じで、終始、唖然。

笑わすならちゃんと笑わしてよ!

でも、その悶々とした感じが狙いなのかもね…。そうなら、完全にしてやられたことになります…。

2007/01/07

青春デンデケデケデケ <1992/日本>

青春デンデケデケデケ <1992/日本>

★★★☆☆☆☆☆☆☆ (3points)

偉い!なにが偉いって、こんな弛緩し切った映画を最後まで辛抱強く観た、俺が偉い!

久々にわたし怒ってます。なんでしょ、これ?135分も観たってのにさ、感じるものが、何ひとつない…。揺さぶられるものが、なにひとつ、ない。

なんか、”小学生の夏休みの絵日記の高校3年間バージョン”って感じ。今日は家族と海に行きました。とても楽しかったです。が、今日は女の子と海にデートに行きました。とても楽しかったです、に変わっただけじゃん!ひとつひとつのエピソードがなんか個別に切れちゃって、繋がっていかないしさ。しかも、エピソードがあり過ぎて、全体としてみると、全部ピンボケ。焦点なし。さらにまずいことに、大した苦悩もなくことが進んじゃうからさ、主人公、まったく飛べてないじゃん。だから、どこにも着地できないじゃん。つまり、一言で言うと、物語が成立してないじゃん!!

映画って物語を見せる装置でしょ?で、物語ってある一定の普遍性を持つからさ、例えばまったく行ったことのない国の映画にも共感したり、逆に反発したりできるわけでしょ。そこに映画の意味があるわけでしょ。

その意味で言うとさ、これ、映画として成立していると、少なくともわたしは思いたくない。この時代に青春時代を過ごしたほんの一握りの層にのみ、やっとこさ、僅かながらの意味(懐かしいっていう思い、ね)を生じさせられる、そんなもの、結婚式でよく流れる「2人の馴れ初めビデオ」とおんなじレベルじゃねぇ~か!

ちなみに、単純に青春時代のバンド物語を観たいなら、「リンダ・リンダ・リンダ」の方が10倍まし。青春の青さを観たいなら、「パッチギ!」の方が100倍まし。いや、「パッチギ!」を出すまでもなく、「ぼくらの7日間戦争」の方が断然まし!

もう1回言います。わたし、怒ってます。

以上

※今回ネットで評価みてたら、超意外なことにやたら高評価なのに、正直、驚きました…。

2007/01/06

花とアリス <2004/日本>

花とアリス <2004/日本>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

過剰な絵がやや邪魔。せっかく本と役者がしっかりしてるのに。

ストーリーは2人の女の子がある出来事をきっかけに右往左往しつつ、それを乗り越えて、次のステップへ、っていう極めて王道路線(通過儀礼モデル)。別に新しくもないけど、それはそれでしっかりしてる。

役者(鈴木杏/蒼井優)もうまい。蒼井優の微妙な表情の演技にはおじさんちょっと痺れた。

でもさ、ピンボケ+白飛びしまくりの絵は、ありゃ、なんとかならんもんか?たしかに少女漫画っぽい物語にはあれが必要なのかとも思うけど、ちょい過剰気味。少女漫画好きのおばちゃんと、少女漫画に出てくる少女好きのロリコンおやじにしか、効果を発揮してないんじゃね?わたしゃ、コンタクトの調子が悪いのかと思って何回も目薬さしちゃいましたよ…。ってのは冗談としてもよ、もっと本と役者を生の形でみせたほうが映画としてプラスなんじゃないかね?

ナイスの森 <2004/日本>

ナイスの森 <2004/日本>

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ (0points)

人のお金使って遊んで、それが何がしかの芸になるのは、とんねるずだけです。

個人的に、映画は物語(意味のかたまり、ね)に映像をのっけたもんだと思ってますので、これは映画じゃなくてただの映像です。意味をどうしても求めちゃうわたしが古い、のかもしれんが、こればっかりはどうしようも、なし。

ってことで、本作、評価のしようがありません。でもたぶん作り手はそれで本望でしょう。遊んでるだけなんだから。

2007/01/05

でらしね <2004/日本>

でらしね <2004/日本>

★★★★☆☆☆☆☆☆ (4points)

いたって真っ当な監督が変態っぽくみせようと頑張れば頑張るほど映画が下品になっていく、ということの証のような映画。

この監督、常識人でしょ、たぶん。人となりなんて全く知らないけど。なんか無理して、変態の方向にベクトルを向け過ぎてる気がして、痛々しい。これが率直な感想。変態ベクトルはいいとして、やっぱ、突き抜けないんだよね…。突き抜けないから、その途中で、ヘロヘロってなって、なんかこっちが逆に恥ずかしくなる…。やるなら、やるとこまで、やって下さい。やらない、もしくは、やれない、のであれば、やらないで下さい。以上、かな。

2007/01/03

タブロイド <2004/メキシコ・エクアドル>

タブロイド <2004/メキシコ・エクアドル>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

これ、まあまあいいと思いました。でも、後味が悪過ぎて、なかなか消化し切れません…。感想書くのはしばしお待ちを。

好きだ、 <2005/日本>

好きだ、 <2005/日本>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

奇跡の前半。蛇足の後半。 最後の最後で出ちゃった「色気」で全部台無し。

物語はこんな感じ。

どこにでもありそうな田舎で育った同級生2人(宮崎あおい・瑛太)。17才の2人はお互いに思いを抱えながらも、それを口に出せない。で、突然の別れ。17年後(お互い34才)偶然の再会(永作博美・西島秀俊)。お互い17年分のいろんな想いを抱えながらも、まだ言えない…。

ま、この映画、言えない一言はタイトルから既にネタばれしちゃってるんで書いてもいいか…。そう、「好きだ」の一言が言えない2人。17才では言えずに離れた。34才でもなかなか言えない…。そして、2人は?みたいな。

で、書いてて、再認識しましたが、「好きだ」が言えようが言えまいが、そんなことは正直わたしにとってはど~でもいいんです(だって今書いててちょっと照れましたもん…)。映画的な主題としても、そんなことが主題じゃないでしょ(と思う、思いたい)。だってさ、仮に17年後に「好きだ」が言えたとする。そうだとしても、「だから?」でしょ、正直…。「あ、そう」でしょ、もっと言うと。

じゃあ、主題は何なのかと言うと、これ完全にわたしの主観ですが、「間」なんだと思うんですよね。2人の会話の「間」や2人の間の空間的な距離感。2人が「好きだ」を言えるかどうかなんてただのおまけ(ふりかけみたいなもん)で、この映画はただ単純にその「間」をお客さんに観てもらうことだけが主眼の映画なんだ、と、まぁ、こう、勝手に思って観てました。

そういう(超自分勝手な)視点で観てるとね、特に前半はすごいですよ。いや、本当にすごい。びっくりした。ちなみにわたしは自分がすごいと思うものに遭遇した時に背筋が寒くなるという癖(?)を持っているので、その体感を基準に物事を判断してるところがあるのですが、前半はもう、ものっすごく寒かった…。

何がすごいってさ、

まず、微妙な距離で立つ2人。これがまあ、なんというか、言葉で表現しようとすると、「寄り添いそうで寄り添わない」(…)なんて本当に陳腐な言葉しか、語彙の少ないわたしには思い浮かばないんだけど、これが本当に絶妙の距離(ま、観て下さい)。しかも、舞台は土手の上。それを下から見上げるように撮る形なので、2人の背景はおっきな空。おっきな空にちっちゃな2人(ちなみに前半戦の背景は80%空です)。その距離感を見せたいがゆえに、この構図になったのだと、わたしは思う。この構図、奇跡です。しかも、その微妙な距離が唐突に縮められて…、まぁ、回りくどいのでそのまま言うと、土手でキスするわけですが、その時の「ふっ」って一瞬時間が止まったような感じ(あぁ、また表現が陳腐だ…)。告白しますが、わたし、その瞬間に「んぅぉ」と短く息のみましたよ…。しかも、声付きで。

そしてそんな2人がぽつぽつと、かつ、ぼそぼそと、しゃべる。これがまぁ~、リアルです。17才だったころの自分が好きな人としゃべってるの思い出すと(正確には思い出せないけど)、たしかにあんな感じだったんだろうなぁ、と思う。なんつうか、言葉の50%くらい「あぁ」とか「まぁ」とか「そぅ」とかで、相手の反応を考えすぎるあまり会話に不自然な間ができちゃって。若いころの自分を思い出して懐かしくなり…、なんて余裕はわたしにはまるでなく、ただただその会話のリアルさに、痺れました。

でだ。

後半…。

奇跡の前半を観せられただけに、実は、わたしの中ではこの映画は前半で終わっちゃってるので…、あとは全部、余計でした。たしかにいいところもあるんです。西島秀俊と永作博美がなんにもない暗い部屋で2人、会話を交わすシーンなんて、あぁ、17年前のあの「間」が今はこうなのねぇ、分かる分かる、と思った。一面、空だった背景が、今はこのがらんとした暗い部屋。窓の外は非常にありきたりななんでもない「東京」の風景。ちょい背筋が寒くなったりも、たしかに、した。※28才のわたしは”どちらかと言えば34才の2人に近いという端的な事実”に若干愕然ともしたが…笑。

でも、最後の最後で全てを台無しにするような出来事が起きちゃいます(これ書いたら観る気が起きなくなると思うので書きません)。

全部わたしの勝手なのかもしれないけど、映画の主題がいきなりそこで「好きだ」を言うっていうそんな詰まらないことに塗り替えられちゃう。おいおい、それはあくまで「ふりかけ」だったでしょぅ。もう一度、思い出せ。それはどうでもいい些細なことなんだって、この映画にとっては…。いや、一応、物語を完結させるために、どっかでそれ言わせてもいいよ。でも、それ言わせるためのフックとして、それ使っちゃダメでしょ~、いくらなんでも。

…たぶん、監督は、最後にどうしてもほんの少しのカタルシスが欲しかったのだと思う。ついつい色気出ちゃったのだと思う。いや、監督じゃなくて、映画の興行的な部分でそれを周りが無理に挿れさせたのかもしれぬ。でも、どっちにしてもそんな飛び道具使っちゃったら、この映画は、やっぱり「好きだ」をずっと言えずにいた2人が最後に「好きだ」と言えました、そして最後はちょっと感動的でした、ちゃんちゃん、ってことになっちゃうじゃんか!

ってことで、後半は蛇足。立つ鳥あとを濁しまくり。

※ちなみに今回色んなサイトのこの映画の評価を見てたら、多くの人が宮崎あおいを「アイドル女優」として見てたことに、おじさん、気付いた。「アイドル女優だと思って観てたら、意外と演技がうまくて驚いた」みたいな。それもこれも「NANA」の影響か!?「NANA」なんて気恥ずかしくて観るに観れないおじさんとしては、宮崎あおいは「ユリイカ」で奇跡の演技をしていた女の子の印象しかないので、今回の「好きだ、」でも「お~やっぱりすっげえうまいなぁ~」って印象でした。
※さらにちなみに、タイトルの最後に「、」を付けるのって、もうそろそろ寒くないですか?モーニング娘。から何年経ってると思ってるんでしょう…。DVDの特典映像で監督(石川寛)が、その「、」には意味があって、「好きだ」の後に何らかの言葉が続いていて…、みたいな説明をしてましたが、その説明がますます寒いです…。