2007/02/08

12人の優しい日本人 <1991/日本>

12人の優しい日本人 <1991/日本>

★★★★★★★★★☆ (9points)

文句なしの傑作。「いるいる、こういうやつ」ってキャラクターの連続。人間観察の妙。ここまでいくと職人技を超えて、神の域でしょう。でも、そんなコメディの裏側で、人間が人間を裁くということの難しさや危うさをちゃんと描いてるところに、三谷幸喜の奥行きを感じる。

いろんなところでもう何回も褒められてきた作品ですので、もういいかとも思いますが、絶賛しときます。

これ、すごいです。絶対、観るべきです。最近の三谷幸喜の作品なんて観なくていいから、これだけは観とくべきです。

表向きはコメディ。日本にも陪審員制度があるとの前提で、ひとくせもふたくせもある面々がああでもないこうでもないと、殺人事件の被疑者が有罪か無罪かを議論する。まぁ~、これが、個々のキャラクターがよく描けてる。ロジック無視で精神論で押しまくるやつあり、声の大きい他人の意見にすぐ擦り寄るやつあり、ちょっと斜に構えてお前らとおれは違うっていうメッセージを吐くことだけに執念を燃やすやつあり、とにかく早く会議を切り上げて帰ることだけを考えるやつあり。日々の会社での会議なんぞを思い出し、「あぁ、こういうやついるよなぁ~」の連続。人間観察もここまでいくと、ちょい怖いですね。圧巻です。三谷幸喜ちゅう人はいつも何考えて、人間と付き合ってんでしょうかね。

でもね。それだけだったら、たぶん、この映画、せいぜい★7つくらいでしょ。観終わって、はい、楽しかった~、で、おしまいだもん。

個人的な意見ですが、この映画、何がすごいって、コメディの裏側で、表立って主張してはみせないんだけど、人間が人間を裁くことの難しさや危うさをちゃんと描いてるところ。人が人を裁くっていうけど、裁く側の人間のレベルなんてこんなもんよ、ってとってもシニカルにみせてくれる。民主主義のありのままの実態、って言ったら大袈裟かな?でも、民主主義以上の仕組みを考えることができない以上、ぼくらはここから出発するしかないのよね、ってわたしはそこまで考えちゃいました。

陪審員制度というあり得ない設定がもはやあり得なくなくなった今にこそ、もいっかい、この映画見直してみるべきでしょう。