2006/12/31

野獣の青春 <1963/日本>

野獣の青春 <1963/日本>

★★★★★★★★☆☆ (8points)

はい、これ、やばいです。本当の娯楽とはこういうことを言うのでしょうね。

一応、ストーリーを簡単に言いますと、警察を不祥事(仕組まれたのね)で追い出された元刑事(宍戸錠)が、友を殺した(これまた仕組まれてね)犯人を捜すため、自らヤクザの組に入って、中から犯人を探し出すっていうね、まあ、高校生にでも書けそうなありきたりな話。

でもね、何がいいって、以下3点。

①一応犯人探しのストーリーなので、その線で評価した場合に、最後の最後で分かる犯人がちょい意外(ま、これはわたしが大酔っ払いで観たから、かも…)。

②難解の対極にあるストーリーで観てる最中な~んにも考えなくていいので、(鈴木清順の割に)人に勧めやすい。だって、いっくら鈴木清順が好きとは言えね、女の子に、「ツィゴイネルワイゼン」なんて勧められないわけですよ、いくらなんでも。あ、はいはい、この人ってそっち系の人(ぶってる自分が好き)なのね、って思われちゃいそうで。その点、これは勧めやすくてとっても素敵。

③描かれるファッション、家具、街並み、全部、ポップ。ポップで、かつ、猥雑。宍戸錠なんて、黒のスーツに黒のトレンチ、挙句の果てに白シャツに白のネクタイ、だからね。結婚式かよっ…。でも、好き。That's 60年代。Viva 60年代!

明日(大晦日)は黒のトレンチを買いに行くと共に、鈴木清順と年を越すことが、今決まりました。

2006/12/30

事件 <1978/日本>

事件 <1978/日本>

★★★★★☆☆☆☆☆ (5points)

風呂敷たためず…。期待値上げすぎちゃダメなのよ、やっぱり。

映画のとっかかりは、こう。

死体発見→容疑者(永島敏行)逮捕→容疑者は被害女性(松坂慶子)の妹(大竹しのぶ)と同棲中であることが発覚しマスコミ大騒ぎ→さらにその妹が容疑者の子を妊娠していることが判明しマスコミ狂喜乱舞→で、取調べの過程はすっ飛ばして、公判開始(さぁ、この3人に何があったのか、これから明らかにしてきますよぉ~)。

ここまでは、いいんですよ。とってもいいんです。特に派手な松坂慶子と純朴な大竹しのぶの対比なんてゾクゾクさせるじゃない。一皮剥いてみたら、純朴に見えた大竹しのぶの方の情念の方がより濃厚で…、なんて期待しちゃって。

で、そこからは淡々とした公判過程が地味に描かれるわけですが、これがまぁ~ゆっくりしてて、1時間経っても、まだ何にも分からない…。そのころから「ん?これはもしかして…」と不安に思い始め、終了した瞬間に出た一言は、「あぁ、やっぱりね」。

ネタばれになっちゃいますが、だって、結局のところ、こういうことでしょ。

妹の彼氏を愛してしまったがゆえの苦悩から(突発的に、かつ間接的に)自殺した姉と、彼氏が自分の姉と関係を持っていることを知りつつ、でも彼氏のことを心から愛するがゆえに、彼氏の行いに目をつぶり続けた妹と、姉と妹、両方の間で揺れつつ、自分で撒いた種から出た芽にがんじがらめに縛られて、「もぅだめだぁ~」ってなってるダメ男…

が、いました。 とさ。

で、なに?だよ。まったく。

2006/12/29

隠し砦の三悪人 <1958/日本>

隠し砦の三悪人 <1958/日本>

★★★★★☆☆☆☆☆ (5points)

結局、武士かよ…。

↑の一言に尽きちゃってます。私の感想は。

黒澤明作品の中でも1、2を争う駄作、だと思う。

勝手な想像をするに、本作の位置づけは完全なる「娯楽作品」。当時の評価もそうだったみたいだし。現時点での皆さんの評価も「娯楽作として1級品」やら「とにかく痛快っ!」ってな線ですよねぇ。私が見ても「娯楽作品」を狙ったんだろうな、とは思う。

でもね。

これ「娯楽」かぁ~?

楽しいかぁ?

正直私には全く楽しくなかった…。

そりゃね、三船敏郎も格好いいとは思うしさ、藤田進も渋いと思うよ。でもさ、庶民な私は格好よすぎる三船敏郎になんぞ、まるで自己投影できないわけですよ。だって、はなから違い過ぎるもの…。

ってことで、しょうがなく、藤原鎌足と千秋実のトンチキ農民コンビの視点で見ちゃうわけですけど、そうするとさ、本当に、ほんとう~に、この映画、不快…。

だって、この2人の描かれ方って、なんの救いもないじゃん…。最後まで強欲一辺倒よ…。

武士と農民。その身分的な格差。そして、身分的な格差の違いが固定化されることによる(つまり育ち方が全く異なることに起因する)、精神的な格差(気位の格差と言ってもいい)の再生産。そして、その再生産に起因するさらなる身分的な格差の強化…。

そんなことを今の時代状況に重ね合わせて考えちゃうわけですよ、ついつい。そんなこと考えつつこの映画観ること自体、野暮だと重々知りつつも、どうしても鑑賞中そのことが頭を離れない…。ハぁ、農民はますます農民になり、武士はますます武士になるのね、って。

そんなこと考えちゃってる状況で、その映画が「痛快娯楽作品」足り得るわけない…(少なくとも野暮なわたしにとっては)。

※ただし今回のわたしの感想はつい先日、溝口健二の「雨月物語」を観ちゃったことにもろに影響されてる可能性あり。あの映画では、主人公の農民2人もこれでもかってくらい強欲で野暮でだらしないんだけど、それに並ぶくらい、つーか、輪をかけて、武士が強欲で野暮でだらしない。その時代なんて全く知らないけど、今から勝手に想像するに、その描き方の方がよっぽどフェアだろうな、とわたしは思う。

ペパーミント・キャンディー <1999/韓>

ペパーミント・キャンディー <1999/韓>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

痛い。痛すぎて、劇中何度も画面から目を背けたくなる。

前半は「こいつ痛ったいヤツだなぁ~」、後半は「ん、待てよ…、おれも、こいつみたいにもしかしたら痛いんじゃないか…?」。

物語は過去へとエピソードをさかのぼっていく構成。見てる側は、未来と過去とを行ったり来たりしながら、物語をつなげていく。「あ、あれがこうなって…、で、そうなったわけね…」って。

主人公キム・ヨンホの未来と過去を考えながら、気がつくと、自分自身の過去を考えていた。

また、それが痛くて痛くて。

でも、こういう痛い映画をちゃんと痛く作れる韓国映画に感心。

おバカで底抜けに明るい映画もあっていい。癒されるやわらかな映画もあっていい。

でも、こういう映画もあっていい。

ぼくは怖くない(IO NON HO PAURA) <2003/伊>

ぼくは怖くない(IO NON HO PAURA) <2003/伊>

★★★★★★★★★☆ (9points)

久々の会心作!ヨーロッパ映画(健康的な方の)まさにずばりの、大好きな世界観。

「イタリアのスタンド・バイ・ミー」なんて言われてるけど、「ニュー・シネマ・パラダイス」に近い。

そのくせ、飽きさせない。ハラハラドキドキなわりに、それだけじゃなくて、ベースはホノボノ。

うん。これ最高です。

画が圧倒的に美しい。画面いっぱいに広がる金色の小麦畑。で、イタリアと言えば…の自転車。フィリッポとはじめてコミュニケートできた後、小麦畑を通って家に帰っていく時、手離しで自転車漕ぐあの時の、画。いやぁ、素晴らしすぎる。

こういうの見てると、子役の演技の素晴らしさにほんと見惚れる。日本の子役(特にプロダクションとかに入っちゃってる、いかにもなそれ)の質の低さが見ていられない。

…ま、それはいいとして、とにかく、お勧めです!

北京ヴァイオリン <2002/china>

北京ヴァイオリン <2002/china>

★★★★★☆☆☆☆☆ (5points)

期待が大きかっただけに失望感は拭えず。「あ、こんなもんなんだ・・・」って感じ。

たしかに、いい場面はいくつかあるんだけど、どれもこう、なんと言うか、いまひとつ。

主役の男の子の大根っぷりが、目につく。素人さんだから仕方がないと思いつつも、やっぱりどうしても目についちゃって、物語にのめり込めない。

もちろん、あの素人っぽい演技(演技とも呼べない演技だけど…)が、逆に素朴さがよく出てていい、って意見があるのも分かるけど、うーん、そこまでいいお客にはなれなかった。

ベッタベッタに塗ったナチュラルメイクがやっぱり好き、ってのと似てんのかな…。

チェン・カイコー自身、ヴァイオリンの先生役で出演。いい味出してます。

アンタッチャブル(The Untouchables) <1987/米>

アンタッチャブル(The Untouchables) <1987/米>

★★★★★☆☆☆☆☆ (5points)

古きよきハリウッドを継承した勧善懲悪モノ。楽しいっ、ってだけで終わりのような映画。

デ・パルマにしては、人に勧めやすいが…。

ただし、役者陣の豪華さと演技は見もの。

特に、デ・ニーロはほんといい演技してる。だって、憎たらしすぎるもん。

ケビン・コスナーはまだ細身で、かっこいい。ただ、他の役者連中に食われてるような感もなくはない。

随所にお洒落なフックあり。

10日間で男を上手にフル方法(How to Lose a Guy in 10 Days) <2003/米>

10日間で男を上手にフル方法(How to Lose a Guy in 10 Days) <2003/米>

★★★★★★★★☆☆(8points)

人間には何も考えずにいられる時間が必要なのかもしれない。

…白状します。良かったです、とっても。

いやぁ、たまにはこういう映画もいいですね、ほんと。

何も考えずに見れる幸せ、ってあるような気がしました。

話の展開も全部読めちゃうし、やたらチープなキャラ(デラウェイ夫人?とか特に)が満載だし、マシュー・マコノヒーはトッティー顔(@ASローマ)でいけ好かないし…、で、ぜ~ったい、寝ると思ってた。

…でも、あら、気付いたら、ぼけ~っと見ながら、たまにゲラゲラ笑って、時折見せるケイト・ハドソンのあまりのかわいさにビックリして、挙句の果てに、「だあぁ、もぉ~~」なんてちょっと焦らされてたりして…。

いや、満足。

ブルーベルベット(Blue Velvet) <1986/米>

ブルーベルベット(Blue Velvet) <1986/米>

★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ (1points)

いかにもリンチなキモイ映画。

いきなり最初に、野原に落ちてる耳拾っちゃうんだからね…。

物語に乗り切れず。

原因は明らかで、この主人公(カイル・マクラクラン)の外見がど~しても好きになれないから…。いかにも田舎のアメリカのお坊ちゃん。(わたしにとっては)とっても嫌な感じでアゴまで出ていやがって、もう最低。それだけで、見る気なくすくらい嫌い。

個人的な事情ですみませんが…駄目なものは駄目で…。

ただし、デニス・ホッパーの怪演っぷりはさすがでした。イザベラ・ロッセリーニを無理やりやっちゃうシーンなんて、たぶん映画史上に残るくらい、キモイ…。

「アレックス」なんて目じゃなく、絶対に子供には見せちゃいかんぞ、あれは。

アレックス(IRREVERSIBLE) <2002/仏>

アレックス(IRREVERSIBLE) <2002/仏>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

モニカ・ベルッチのレイプシーンだけやたら話題になった作品。その通りのような気がする…。

グルグル回すカメラワーク、時間を逆行していくシナリオ、そのまんまの暴力描写。

一見すると、おれっておしゃれでしょ、と言いたいだけの美大生的な自慰映画に、見えなくもない。

ノエ節全開。出てくる人間、ほぼ全員切れてる。切れてないのは、モニカ・ベルッチだけ。

トゥルー・ロマンス(True Romance) <1993/米>

トゥルー・ロマンス(True Romance) <1993/米>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

タランティーノが書く恋愛モノ。なるほどね、って感じ。

舞台は寒々さの漂うデトロイト、漫画屋さんのバイト店員のクリスチャン・スレーターと駆け出しコールガールのパトリシア・アークエットが、突然出会って恋に落ちる。

きっかけは、漫画屋さんのオーナーが、クリスチャン・スレーターのBirthdayPresentとして、コールガールのパトリシア・アークエットを手配したこと。

なんで恋に落ちたのかは、まったく不明…。

何も語られない。

でもそれはそれでいい感じ。

その後は、いつものタランティーノ節。

ドタバタの末、ドンパチ。

この映画でも、パトリシア・アークエットへの愛を証明せんがため(たぶん)、コールガールの元締めたるゲーリー・オールドマンを殺しに行って、実際に殺しちゃって、パトリシアの服だと思って奪ってきたスーツケースの中身が実は大量のコカインで、ラスベガスに行ってそれをハリウッドのプロデューサーに売り払おうとして…。追いかけてくるギャングと、大物狙いの警官と…。最後は、あり得ないドンパチの末、2人は無事カンクーンへ。

ドンパチはお決まりのことなので置いておくとして…、この映画のクライマックスは、クリスチャン・スレーターとパトリシア・アークエットがエッチした後、2人でベッドに手をつないで座っているシーン。

このシーンを見るだけでもこの映画を見る価値がある。

猥雑さの中の純粋なもの…というかなんというか。

なんか妙に切なくなる。

クリスチャン・スレーターの父親役のデニス・ホッパーが、格好良すぎ。ああいうオヤジになりたいもんだ。

ゲーリー・オールドマンは気持ち悪すぎ。演技うまい証拠だよなあ。

ブラット・ピットは本当にちょい役で、やたら猜疑心のないジャンキーの役。追ってくるギャングたちに全部話しちゃう。ブラット・ピットって完全なるイイモンよりも、ああゆうダラシナイ役を演じさせたときの方が、いい味だすような気がするな。

ミスティック・リバー(MYSTIC RIVER) <2003/米>

ミスティック・リバー(MYSTIC RIVER) <2003/米>

★★★★★☆☆☆☆☆ (5points)

とりたてて何の印象もない。

役者が豪華なこと、かつ、言われてる割にそれほどいい演技してないよなぁ、と思ってしまったことくらい。

ショーン・ペンは特に期待してたけど、その暴力性と宗教性のギャップが思ったほど伝わってこなかった。

消化不良です。

青い春 <2001/日>

青い春 <2001/日>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

この監督の描く空気がたまらなく好き。

監督豊田利晃、原作松本大洋。

いや、それだけで、見ないわけにはいかないじゃないかい。

案の定の豊田節。

いつもの役者。

いつもの音楽。

人物の背景を語らないいつもの語り口。

でも、いいんだよねぇ…、何回見ても飽きない。

特に、今回は舞台が高校。校内以外のシーンは憶えている限り、皆無。無機質な校内で、その分、余計に強調される生徒の感情。過剰な演技はなし。でも、演技をするステージが過剰に無色だから、否応なく、色が浮かび上がる。

で、感情と感情が結ばれたり、ぶつかり合ったり。

あぁ、「若い」ってのは、「痛い」ってことなんだなぁ、と改めて納得。

龍城恋歌 <1996/中国>

龍城恋歌 <1996/中国>

★★★★★☆☆☆☆☆ (5points)

あと一息。もうちょっと掘り下げてくれないと、一番肝心なところが伝わってこない。

肝心なポイントは、以下の3つだと思われる。

①主人公の女性の怨念、②殺し屋の男性の愛情、③敵(熊氏)の悔恨。

で、実は3つとも、ピンとこなかった…。

まあ、①は掘り下げて描写する必要もなく、「そりゃそーだろー」って感じだけど、あと2つは明らかに描写不足。

特に、②は全く分からんのです。

下世話なわたくしには主人公の女の子がかわいい、なんてゆーごく単純な理由以外に見つからんのです。

秋刀魚の味 <1962/日>

秋刀魚の味 <1962/日>

★★★★★★★★☆☆ (8points)

人と人の間にある距離感の妙。

お恥ずかしい話ながら、これが小津安二郎初体験。テレビで放送されているところを何度かは見たことはあるけれど、それもあくまで、チラ見レベルで、きちんとしたかたちで見るのはこれが一本目。

坦々と進む物語、抑揚のない演技、絡まり合うようで絡まり合わない一定の距離感を保った人間関係。

その全てがとても新鮮。

特に、そのセリフ回し。

「よかったねぇ→よかったよぉ」「そうでしょぉ→そうだねぇ」的なコミュニケーション。

メッセージレベルでは何も言っていない。その意味では無意味。でも、そこに厳然としてあるのは、コミュニケーションをとっているという事実性。

あぁ、こういうコミュニケーションて、最近してないなぁ、と思った。「同じこと言ってんじゃねぇ、お前はどう思うんだよっ」とついついメッセージレベルでの意味を求めてしまう傾向に、今はあると思う。

人がこの映画に癒されたり、和んだりするのであるとすれば、それはメッセージレベルの意味を求めない、別次元でのコミュニケーションがあり得るのだということを提示しているからではないだろうか。

物語は、奥さんに先立たれた初老の男性(笠智衆)が一人娘(岩下志麻)をお嫁に出す話し。

今まで奥さんの不在を埋め合わせてくれていた娘のありがたさと、そうは言ってもいつまでもお嫁に出さないわけにはいけないという現実との間で、揺れる父親。

娘の結婚式の後、一人立ち寄った馴染みのバーで、マダム(岸田今日子)に「今日はお葬式ですか?」となにげなく聞かれたときの一言。

「ま、まぁ、そんなようなものです…」。

このシーン、この一言だけで、娘を嫁に出す父親の思いが全て凝縮されているような気がしてならなかった。

全く個人的な話になってしまって申し訳ないが、私にはこんな経験がある。

私には姉がいて、この姉が結婚することになり、旦那さんがうちの両親に挨拶に来た日(いわゆる「娘さんを下さい」というシチュエーションですね)。

父親は「世界が平和であることを今ほどありがたく思った日はないっ」との謎のコメントを発しつつ、快諾。

「おぉ、丸く収まったわい」と一同胸を撫で下ろしていたその夜。

なんのきなしに父親の部屋を訪ねると、薄暗い部屋の中で父親がひとり布団に横になりながら、涙を流して泣いていた。

その時はたしか、「明日俺一時間目から授業だから、朝駅まで車で送ってってよ」「あぁ、いいよ」みたいな会話をそっけなく交わしただけだったけど、あの一瞬だけは、忘れられない光景として、私の目に焼きついている。

父の涙を見たのも、父の弱そうな姿を見たのも、あの時が初めてだった。

映画のラスト、台所でひとり水を飲む笠智衆の背中と薄暗い部屋に横たわる父親の背中とがオーバーラップして、切なかった。

…ちなみに、小津作品がテレビで放送される際、何があろうと決まって見ていたのは、うちの父親でした…。

半落ち <2004/日>

半落ち <2004/日>

★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ (1points)

かぁ~、もったいねぇ~~~~。

世紀の駄作。

原作は良い。

が、映画の尺に物語を合わせるという発想が、ない。小説の内容全部まるまる2時間に詰め込んでどうするよ…。

…台無しです。

イメージ的には、映画版『日本の論点』。広くて薄い、現代社会の問題点のカタログ化。

前半戦は、警察vs検察vsマスコミの”ありきたりな”構図で攻めるも、いかんせん、決定打なし。城もしくは柳沢。フォワードのくせしてシュート打たず。い~ところでパスして「してやったり顔」。

後半戦は、ハーフタイムのジーコの叱咤が効いたのか、作戦変更。一転して、これまた”ありきたりな”命の問題へ。尊厳死派vsあくまで介護派。寺尾聰が絶妙のスルーパスを繰り出すも、吉岡秀隆が空振り連発。1人得意のナルシストゾーンに入り、脈絡なく、クルクル回る。そうこうしている間に、鶴田真由の素人演技でファウル。PK献上。鉄の壁樹木希林をもってしてもさすがにPKは止められず、あえなく失点。試合終了。

こういうことは、映画じゃなく、2時間ドラマでやって下さい。

以上。

チルソクの夏 <2003/日>

チルソクの夏 <2003/日>

★☆☆☆☆☆☆☆☆☆ (1point)

いやぁ~、良かったっ!!!何が良かったって、こんな映画に感動するほど、おっさんにまだ自分がなっていないってことを確認できて、良かった…。

嫌いじゃないんです、本当は、こういう映画。青春ものも大好物だし、あざとい演出つかってもいいから とにかく気持ちよく泣かせてくれ、ってスタンスで映画いつも見てるし。

でもね、これはいけませんわ…。

オヤジを慰撫すること、それだけが目的の映画。やたら純粋な女の子たちといい、必然性のない下着姿の多さといい、日韓の間にある互いの偏見という社会問題を映画のスパイス程度の扱いで持ってくるところといい。

その全てが、古いのです。

古い物語を描く、つまり登場人物の古さを描く分にはいいのです。

でもね。監督自身の感覚の古さを描いて、どうすんのさ?

ブラス!(Brassed Off) <1996/英>

ブラス!(Brassed Off) <1996/英>

★★★★★★★★★★! (10points)

ベタだろうがなんだろうが構いません。サイコーなものは、やっぱり、サイコーです。

もう何度目だろ…。

何度見ても、やっぱり、おんなじように笑わされて泣かされます。

準決勝勝って町に帰ってきたら、炭鉱の存続をかけた投票での敗北を知り、バスを降りて、ただただ立ち尽くす姿。その後、ピート・ポスルスウェイトがふらっと倒れる姿、慌てて駆け寄るメンバーの姿。

…、ため息が出るくらい切なくてかっこいい。

たしかにユアン・マクレガーとタラ・フィッツジェラルドの恋物語もよぉ分からんし、大して練習してないのに優勝しちゃうし…、つっこみどころは大いにあります。

が!そんなことはどおでもよし!

全編通じて漂う空気のあたたかさ、それだけで、満点です。

2006/12/28

こころの湯 (Shower) <1999/中国>

こころの湯 (Shower) <1999/中国>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

たまには実家に帰ってみようかな…。そう思わせる映画は、いい映画です。

唐突ですが、私の中には、いくつか「いい映画」の条件がありまして、その条件の1つが、見終わった時に、「あぁ、たまには実家帰ろっかなぁ…」と思わせる映画…。

これまで見た「実家に帰りたくなる系映画」ベスト3。

3位、リトル・ダンサー。2位、茶の味。1位、千と千尋の神隠し…。

本作も少なくとも10位以内には入るはず。

お湯につかって指の先がしわっしわになるように、ぼけっーとなんにも考えずに見てると、自然と日々のストレスでぴんとつっぱった気持ちがなんか次第にしわっしわになっていくような…、好編です。