2007/03/23

SPUN <2004/米>

SPUN <2004/米>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

いい!”この手の映画”の中では、ひっさびさに、いいッ!

”この手の映画”ってひと括りにしちゃうのもどうかとは思うけど、なんとなくこういうジャンルってあるよね。古いとこだと「トレインスポッティング」、新し目だと石井克人「Party7」やら関口現「サバイブ・スタイル5+」。

このジャンルの中では、ほんと久々に良い!期待値の低さに助けられた感はないわけじゃないけど、それにしても、いい!!

この手の映画ってね、完全に私見だけど、「どこまでお馬鹿になれるか」っていう突き抜け具合と、「どこまで生活の痛さを描けるか」っていう切なさ具合のバランスが肝でしょ。ただ馬鹿やってても「ばかだねぇ~」で終わっちゃうし、痛いだけの映画なら腐るほどあるし。しかも、ちゃんと馬鹿やった上でじゃないと、痛さをちゃんと描けないってこともあるし。

でだ。

上に挙げた「Party7」も「サバイブ・スタイル5+」も嫌いじゃないんです。つーか、むしろ、好きの範疇に入る。でもね、なんかこう、煮え切らないというか、もう一息というか、もうちょい頑張れよ、というか、まあ、なんか足りないものを感じていたわけ。

で、この映画観て、何が足りてなかったのか、ようやく分かった。

「Party7」も「サバイブ・スタイル5+」も、ただ、馬鹿やってるだけなんだよね…、結局は。

その昔、「トレインスポッティング」に感じた思いとおんなじものを、このSPUNから受けた。そして、それって、上に書いた「お馬鹿」と「痛さ」の絶妙のバランス感覚なんだろう、とそう思う。

前半戦の突き抜け具合(ジョン・レグイザモのチ○コ靴下なんて、もう最高じゃない)と、後半戦のなんとも言えない痛さと切なさ(ブリタニー・マーフィーとジェイソン・シュワルツマンがドライブしながら、徐々にお互いの内面を吐露し合う…でも、お互いに自分の本当に言いたいことを吐き出しているだけなので、コミュニケーションは成立しない…なんて、もぅ…素敵すぎる…)。かと言って、「笑えて、泣ける」なんて安直なところには回収させず、むしろ「笑えないし、泣けない」…。でも、なんか、妙な重いものが心の底に残っている、そんな感じ。

お勧めです!

2007/03/22

イーオン・フラックス <2005/米>

イーオン・フラックス <2005/米>

★★★☆☆☆☆☆☆☆ (3points)

「シャーリーズ・セロン、綺麗だねぇ~」としか言えない映画。「それでも見る価値あり」、とはわたしには口が裂けても言えません。

大好きなシャーリーズ・セロン。サイダー・ハウス・ルールで惚れて、モンスターに痺れた。そんな彼女が、今回はSFアクション…。嫌いなんだよね、このジャンル。物語がないから。ってことで、だいぶ心配しつつ、鑑賞。

結果、あぁ、やっぱりね。心配した通りじゃん。

無意味なアクションに、ありふれたSF。はいはい、もういいよ、わかったからさ。

「今ここ」でないもの、「今ここ」にないもの、「今ここ」にいない人、を創作しようとする映画なんだからさ、映画の出来の全ては、製作者の想像力にかかってるわけですよ。で、逆に言うと、それが分かった上でこの映画作ってんだから、製作者は自分(たち)の想像力に相当自信があるんでしょ。…でも、これ、なによ?子供でも思いつく、使い古されたイマジネーション、だけしかないじゃん。とってつけたような「クローン」だの「不妊」だのにごまかされるほど、こちとら、お子ちゃまじゃないのよね。

ってことで、本映画、観るところ(=鑑賞に耐えられるところ)は、シャーリーズ・セロン(の美しさ)しかありません、やっぱり。

それしかないことを知った上で、「それでも観る価値あり」と思える人もいるんでしょう。

でも、そこまでいい観客にはわたしはなれませんね…。むしろ、これが「もしシャーリーズ・セロンじゃなかった場合」にどんなに救いようのない映画になってたかって想像しちゃって寒くなり、挙句の果てにそのしょっぱさにちょっと笑えてきて、シャーリーズ・セロンどころじゃありませんでした。

シャーリーズ・セロン、頼むから、出る映画を選んでくれ。

2007/03/19

裸足の1500マイル <2002/オーストラリア>

裸足の1500マイル <2002/オーストラリア>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

悪意ある悪に比べて、善意から来る悪のなんとたちの悪いことか。そんな救いのない悪に比して、子供たちの帰巣本能のなんと純粋で高貴なことか。

逃げて、逃げて、逃げるだけの映画。そこには何のひねりもトリックもない。だからこれを退屈って人も当然いるでしょう。

でもね、この映画、このシンプルなストーリーこそが、命ですよ。

物語がシンプルで、かつ、絵もシンプルなこと。それによって、この映画、以下のアイロニーが浮き上がる仕掛けになってるんだ、と、そうわたしは観ました。

ただ、母の元に帰りたい。だから、たとえそれが遠い道のりだろうが、ただただ、帰る。これ、帰巣本能ですね。私は、彼女たちに、”人間はどこまでいっても結局は動物であり、かつ、結局は動物であるがゆえに人間である”という逆説を見ました。

そして、その子供たちに比した場合の、白人文化の側のなんと非人間的なことか。自らの動物性を否定しよう否定しようとせんがため、文化文明に身を包み、弱者保護のロジックで武装する。しかし、その彼らの「正義」が行き着く先は、ただの圧迫と強制でしかない。”動物性を拒否すればするほどに、人間性からも遠ざかっていく”という逆説。

あぁ、こういう芯の通った根の深い人間の問題をこそ、映画は撮らなくてはならない。小手先のテクニックが先行した映画多き、現在の邦画。人がどんどん入るようになって、いまや、それらしく作ってあれば何でもありみたいな状態にも見える今の邦画の底の浅さが透けて見える。

2007/03/07

0:34 レイ_ジ_34_フン <2005/イギリス>

0:34 レイ_ジ_34_フン <2005/イギリス>

★★★★☆☆☆☆☆☆ (4points)

この映画、85分と短いですが、これ、凝縮して短くなったんじゃなくて、85分そこらまでしかネタが続かなかった、って感じだね。下らないので、相当暇な人以外、観る意味ないですね、これ。

ほんのちょっとの思いつき。作った本人は「これはすごい思いつきだ」と思っていたであろう超安易/超凡庸なる思いつき。そんな下らないことで、映画なんて作っちゃダメだよ。

<--以下、想像-->

・地下鉄で終電が行った後に構内に閉じ込められたら…、おもしろくない?
・だとしたら、なぜか次の電車が来ちゃうことにしない…、うんうん。
・で、構内で殺人鬼に追われる女…、あ、それいいね。
・でもさ、いくらなんでもただ追われるだけじゃ納得感ないからさ、とりあえずなんかそれらしい過去繕っとこうよ…、そだねぇ。
・じゃあさ、じゃあさ、とりあえずなんかそれっぽいからあ、えーと、”なにがしかの理由で今は地下に封印された謎の病院”…、お、それいいね!そしたら、”胎児の標本とか大量に保存してあることにしちゃおうよ、なんとなく謎っぽいっしょ、これ。
・”そこで産まれ外界との接触なしに育った男”…、完璧ジャンっ!
・あとは、適当に画面暗くしときゃなんとなくそれっぽいっしょ! …Yes!


…って、アホか。

2007/03/05

ワールド・トレード・センター <2006/アメリカ>

ワールド・トレード・センター <2006/アメリカ>

★★★★☆☆☆☆☆☆ (4points)

911がアメリカという国に与えた衝撃の大きさ、傷の深さが今ようやく分かった。あのオリバー・ストーンにこんなどうしようもない映画を作らせちゃうんだからね。

題材が題材だけに、悪口言いづらいですが…、あえて言います。

これ、まるでダメですよ。こんなもん映画じゃない、と極論したくなるくらい、最初から最後まで全部ダメ。なんか、低予算でやっつけで作りました、って匂いがプンプンする。

まず、脚本。お前、予算がないからってわざと閉じ込められてるシーン増やしただろ。そこに人間ドラマを感じるほど、こちとら優しくないよ。しかも、キリスト出すな。たぶん安易に「ゴドーを待ちながら」(@ベケット)を下敷きにしたんだろうけど、失礼だよ、それ、ベケットに。

はい、次。カメラ。場面を暗転させる手法は「ブラッディ・サンデー」(@ポール・グリーングラス)の真似か?まぁ、それは他の映画でもよくやる手だからいいんだけど…、全然決まってないから観てて痛々しいぞ。目が痛いだけ。

最後、役者。特に海兵隊員!お前は…、誰だ?人物の背景描写が全くないから、お前、ただの軍事オタクじゃねぇか!…あ、これも結局、脚本か…。まぁ、いいや。

ってことで、全部ダメ。

これ観るくらいなら、「9・11 N.Y.同時多発テロ衝撃の真実」(@ジュール&ギデオン兄弟)の方が、1000倍まし。危険な現場へと自ら入っていく警官(こっちの映画は主に消防士だけど)の勇気も、身に迫った恐怖を実際にはそれほどリアルに感じられない、という恐怖も、人間が地面に叩きつけられるどうしようもないくらいつらい音も、全部、こっちの方が上。

アメリカはこの事件を咀嚼し、消化し、映画へと昇華するのに、あと10年はかかるんじゃないだろうか?…というよりも、それが正しい姿なんじゃないだろうか?