2007/01/15

鉄コン筋クリート <2006/日本>

鉄コン筋クリート <2006/日本>

★★★★★★☆☆☆☆ (6points)

考えながら見ちゃいけない映画ですね。ビール買ってかなかったことを後から猛烈に後悔しました。

※思いっきりネタばれしてますので未見の方はご注意を。

今回はDVDじゃなくて、映画館に見に行ってきました。東京国際映画祭で見たかったんだけど、時間が合わずに観れなかった、鉄コン筋クリート。

ネットでの評価を見てみると皆さんほぼ以下の論点に焦点化してるみたい。

・松本大洋原作との比較
・声優の出来

どっちも賛否両論あるみたいだけど、わたしはPositiveな感想を持ちました。前者なんてよくぞここまで忠実に再現したって感じの絵になってたし、後者もあんまり違和感は持たなかった。違和感持たなかったというよりも、むしろ、蒼井優(シロ)には正直、ちょい感動したくらい。

ちょいNegativeなこと言うと、クロ役の二宮和也があんまりうまくない。クロの魅力は、あぶなっかしさ(溢れんばかりの狂気をシロへの優しさでなんとかギリギリ包み込んでる、けど、それが時々染み出すように出てきちゃう、みたいな危うさ)にあると思ってたけど、ここの表現が稚拙。なんか声聞いてるとただのお兄ちゃんじゃん。

でだ。

問題は、(上記のクロの声の良くなさとも関係するんだけど)、クロの狂気の描き方が、ちょっと安易、かつ、ちょいレトロ過ぎねぇ~か?、ってこと。クロに対してクロに内在する狂気を「イタチ」というかたちで外部化して表現しちゃう。原作が書かれた1990年代中ごろなら、いいよ。こういうの新鮮味があった時期だから(ACブームなんて、ありましたね、そういや)。でもさ、2007年になってこれそのまんま観せられても、正直、「もう、その方向性、飽きた」ってちょい食傷気味。飽きた、ってのが率直な感想だけどさ、表現の質から考えても、内側にある隠れたものを外に無理やり出してお客さんに観せる、ってちょっとレベル低いんじゃない?二重人格モノのドラマとか流行ったでしょ、昔。あれ、ただ単純に、簡単だからだよ。観せるのが。もうやめにしませんか?

とまぁ、ややこしいこと書きましたけど、アニメ映画としては、よくできてます。アニメにしかできない絵(町を上から俯瞰しながら、そこから下りていって路地裏に入る、みたいな)を存分に楽しめます。蒼井優の出来に震えるだけでも、1800円の価値はあるでしょう。

その意味じゃ、↑みたいな野暮なことをあれやこれや考えながら観るのは、この映画の見方としては正しくないんだろうね…。酔っ払いながら観たら、たぶん、最高な映画です。