2007/05/11

ヨコハマメリー <2005/日本>

ヨコハマメリー <2005/日本>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

リアル嫌われ松子。逆説的だけど、これぞ映画です!

前から気になっていたこのドキュメンタリー。でもなんか、覗き見趣味のような不純な動機で観る自分も嫌だよなぁ、とか、横浜なんて別になんの思い入れもねぇし、とかなんだかんだで言い訳しつつ、なかなか手が伸ばせなかった、このドキュメンタリー。

意を決してようやく観ました。

結果はね、もうなんでもっと早く観なかったのか、ってほんと後悔した…。

手法はたしかにドキュメンタリーなんだろうけど、これぞ、映画ですよ。もう最後は泣けて泣けて仕方なかった。

話の筋はこんな感じ。

かつて、娼婦として横浜の街に立つ白い化粧に純白のドレスの老婆がいた。彼女のことを、人は、「メリーさん」と呼んだ。そんなメリーさんが、1995年に忽然と、横浜の街から消えてしまう。

で、メリーさんの人生とはどんなものであったのか描こうとしていくドキュメンタリーなんだけど、面白いのは、メリーさんの人生をメリーさん自身の言葉で語らせるのではなく、メリーさんに繋がる他の人間の言葉で語らせるとこ。ポジティブに語る人、ネガティブに語る人、実際にメリーさんと直接触れ合ったその感触を語る人、ただの噂レベルの伝聞情報で語る人、メリーさんを語りながらも次第に趣旨を忘れて自分の若かりしころの思い出話を始める人…。もう多種多様。でも次第にその雑多な言葉の集合が、メリーさん(の像)を紡いでいく。で、そこに横浜の風景の中に写るメリーさんの写真が頻繁に挿入される。はぁ、こういう不思議な人が昔いたんだなぁ、と、そんな感じ。

でね、そこで終わってたら、これ、ただの都市伝説ですよ。でもね、この映画、最後の最後で、そういう薄っすらとしたイメージ(メリーさん像)を無意味化する(どうでもいいものにする)圧倒的な映像を持ってきます。それが何かはネタばれになっちゃうので言わないけど、ここがこの映画の主題でしょう。やや冗長な中盤をこらえにこらえて、頑張ってでも、観るべきです。うまく言えないので、やたら大袈裟な表現になっちゃうけど、人が生きてるってことの重みというか厚みというか、そういうものをこれだけ訴えかける映像を、私は、これまで観たことがない。神々しいとまで、私は思いました。

この映画、真実を追究する類のドキュメンタリー、もしくは、社会問題を告発する類のドキュメンタリーとして観てしまうと、たしかに超駄作です。だって伝聞情報そのまま載せちゃってるし、路上生活者たるメリーさんの悲哀なんてまるでちゃんと描こうとしてないし…。

でもね、これ、映画として観たら、間違いなく傑作ですよ。マージナルな人のマージナルな人生をこれほど真摯に正面から描いた映画を私は他に知りません。

※ここまで褒めちぎっといて7点なのには訳がありまして…。インタビューに答える五大路子(メリーさんを題材にした1人芝居を演じる女優)があまりに芝居がかってて、うざい。他の登場人物全て、素の自分で語ってるのに、彼女だけ、違う。明らかに浮いてる。マージナルな対象たるメリーさんに私はこんなにスポットライトを当ててます、しかもこんなに柔らかくて暖かいスポットライトを当ててます、こんな私って、偉くないですか?みたいな嘘っぽさをどうしても感じてしまう。藤原紀香が醸し出すのと同じ嫌らしさを感じる。他がいいだけに、なんでこんな薄っぺらい人間を差し込んじゃったのか、不思議でしょうがない…。