2007/03/19

裸足の1500マイル <2002/オーストラリア>

裸足の1500マイル <2002/オーストラリア>

★★★★★★★☆☆☆ (7points)

悪意ある悪に比べて、善意から来る悪のなんとたちの悪いことか。そんな救いのない悪に比して、子供たちの帰巣本能のなんと純粋で高貴なことか。

逃げて、逃げて、逃げるだけの映画。そこには何のひねりもトリックもない。だからこれを退屈って人も当然いるでしょう。

でもね、この映画、このシンプルなストーリーこそが、命ですよ。

物語がシンプルで、かつ、絵もシンプルなこと。それによって、この映画、以下のアイロニーが浮き上がる仕掛けになってるんだ、と、そうわたしは観ました。

ただ、母の元に帰りたい。だから、たとえそれが遠い道のりだろうが、ただただ、帰る。これ、帰巣本能ですね。私は、彼女たちに、”人間はどこまでいっても結局は動物であり、かつ、結局は動物であるがゆえに人間である”という逆説を見ました。

そして、その子供たちに比した場合の、白人文化の側のなんと非人間的なことか。自らの動物性を否定しよう否定しようとせんがため、文化文明に身を包み、弱者保護のロジックで武装する。しかし、その彼らの「正義」が行き着く先は、ただの圧迫と強制でしかない。”動物性を拒否すればするほどに、人間性からも遠ざかっていく”という逆説。

あぁ、こういう芯の通った根の深い人間の問題をこそ、映画は撮らなくてはならない。小手先のテクニックが先行した映画多き、現在の邦画。人がどんどん入るようになって、いまや、それらしく作ってあれば何でもありみたいな状態にも見える今の邦画の底の浅さが透けて見える。